ベネズエラ攻撃の狙いは中国影響力の排除
だが、この米軍によるベネズエラ・カラカス急襲作戦は、中国の外交使節団のカラカス訪問中に行われ、事件のせいで中国外交官たちは帰国できなかった。そのようなタイミングなどを考えれば、トランプの狙いが、単なる南米の石油資源の主導権奪還というだけでなく、中国への恫喝、あるいはいやがらせが含まれていると考えるのが普通だろう。
昨年12月に発表された米国国家安全保障戦略(NSS)リポートについて、中国の習近平派の識者、王鵬(華中科技大学マルクス学院研究員)は、対中融和、中国との経済重視に見える表現はみせかけであり、実は米国と同等の力を持ちつつある中国との持久戦を考えた戦略転換だ、と分析していた。つまり西半球重視は、米国本土および周辺の支配強化であり、中国が一帯一路などの戦略を通じて浸透している中南米国家における覇権を奪還し、米国の裏庭から中国の政治的・経済的影響力を排除することにある、というわけだ。
米国にとって中国がやはり最大の仮想敵であることは変わりない。だが、これまでの関与政策も関税圧力政策も失敗したので、その対立は長期化し持久戦になると考えた。その上で、米国はまず国内の移民、麻薬、経済問題を立て直す本土防衛、および西半球の周辺国家における支配、コントロールを強化し、中国と本気で対峙できる経済的、資源的、軍事的環境を整えるための、ハイブリッド戦の新たな段階をスタートさせた、という解釈だ。ベネズエラ作戦もこのハイブリッド戦の新段階の延長と考えられる。
米国のマルコ・ルビオ国務長官もNBC「ミート・ザ・プレス」のインタビューで、米国がマドゥロ大統領を逮捕した理由として、彼が麻薬カルテルと組んで米国に麻薬を流入させているのを阻止するという目的以外に、さらに重要な理由として「米国はベネズエラを、イランやロシア、ヒズボラ、中国およびベネズエラを支配しているキューバの情報員たちの活動拠点にさせない」ということを挙げている。このことからも、この考えは裏付けられている。
米国の「敵」に西半球(中南米)を収奪、搾取させないために、ベネズエラに対する作戦を実行した、とルビオはいう。
ルビオが列挙した国家の中で最大最強の国家は中国だ。ベネズエラ作戦によってキューバも瀕死の淵に追い込まれているが、キューバも中国にとって中南米で最も早くに国交を樹立した同志国家であり、米国と異なる国際秩序の再構築を目指すイデオロギー上のパートナーであり、カリブ海国家への浸透工作の拠点だ。
さらに今回の作戦が世界で重視されるのは、ベネズエラが世界最大の石油埋蔵量を誇る資源国家であるという点だ。うがってみれば、遠い将来の大国同士の戦争を意識したとき、平和状態からホットウォー(戦争)にいたるまでのグレーゾーン状態におけるハイブリッド戦において、資源争奪戦が展開されるのはいずれの大戦においても同じだった。戦争の燃料である資源を囲い込むことが、グレーゾーンにおける「戦わずして勝つ」を決める。