深刻な就職難に陥っている韓国の若者たちは、就職のために1点でもいい点数を取るために睡眠時間を減らしながら努力しているが、その努力に中国人留学生たちが水を差しているとなれば、よい感情が生まれるわけがない。このような日常で感じた不便さが若い世代に反中感情を呼び起こしているのだ。
それぞれの政治体制の違いに起因する違和感
民主主義体制下で育ち、人権と公正の価値に敏感な韓国の青年層が、共産主義国家で育った中国人留学生と価値観が衝突し、反中感情に発展する場合もある。
2019年の香港民主化運動当時、韓国の各大学では香港の民主化デモを支持する垂れ幕と「大字報」が流行した。ところが、中国人留学生がこのような垂れ幕と大字報を毀損する事態が多くの大学で発生した。
大字報は軍部独裁政権だった70~80年代に、独裁に抵抗し、民主主義を主張する大学生たちが自由に意見を記載した“壁新聞”で、韓国の大学生たちにとっては思想の自由と民主主義を象徴するものだ。このような大字報を一部の中国留学生が無断で毀損し、大字報を貼った学生たちを脅迫する事態が多発し、韓国メディアではこれを「大字報戦争」と表現した。
「戦狼外交」とも表現される中国政府の高圧的な態度や政策も大きな影響を及ぼしている。2016年のTHAADの朝鮮半島配備をきっかけに始まった韓国への経済制裁の「限韓令」、中国から飛んでくる粒子状物質や黄砂などの大気汚染問題、中国人によるネット上の世論操作問題、西海(ソヘ・黄海)上の中韓暫定措置水域に構造物を無断で設置して領海拡張の野心を表わしている問題なども韓国青年層の反中感情を深めている。
高市日本首相の台湾有事発言をきっかけに、事実上中国人の日本団体観光が禁止されたことで、最近、韓国を訪れる中国人観光客が急増した。それにより韓国の街のあちこちで起きる一部の中国人観光客の無分別な行動が韓国メディアでたびたび取り上げられ、論議を呼んでいる。観光業界はともかく、一般の韓国人の反中感情はより一層高まりそうだ。