「与党的プレーヤー」と化した国民民主
国民民主についてはそれだけで終わらなかった。
昨年来の懸案だったいわゆる「年収の壁」について、所得税の課税最低ラインを178万円に引き上げることで合意。高市首相の「政治決断」という形で決着をつけ、国民民主・玉木雄一郎代表は「共に関所を乗り越えることができた」と満面の笑みだった。
2025年12月18日、国会内で会談し「年収の壁」引き上げを巡る合意書を手にする高市首相(奥右)と国民民主党の玉木雄一郎代表(同左)/写真:共同通信社
合意書には来年度予算を「年度内の早期に成立させる」との一文が明記されている。これで国民民主が来年度の当初予算案の賛成に回ることは確実。予算案の中身が出てもいない時点で成立に協力とは、立憲民主党の野田佳彦代表が指摘していたが、国民民主はもはや「完全に与党」のようなものだ。自維国の3党が協力すれば、来年度予算の確実な成立が見込めることになる。
党首討論で高市首相に質問する立憲民主党の野田佳彦代表(2025年11月26日、写真:共同通信社)
自民党が少数政党であることは昨年と変わらないのに、政権運営に苦しんだ石破前首相とは打って変わって、気づけば高市首相は「強い政権」を手に入れたと言える。
公明党が急転直下で連立を解消し、維新と電撃的な連立合意をしたものの、合意事項である「衆議院議員の定数1割削減」が難航すると、高市自民は維新サイドから連立離脱の揺さぶりをかけられた。ひとまず定数削減法案は来年の通常国会に先送りとなったが、そんな“視界不良”の自維連立政権に国民民主という与党的プレーヤーが現れたのである。
維新と国民民主は、これまでも互いに「ゆ党」として政権に協力し、政策実現で張り合ってきた関係だ。国民民主が事実上の与党となったことで、高市首相は維新と国民民主を競わせつつ、両天秤にかけ、多数派を形成した政権運営ができるようになったわけだ。
補正予算成立時、自維党首会談後の共同記者会見、自国党首会談後の合意書サイン……と、高市首相の笑顔は“高笑い”にも見えた。
だが、しかし。そんな高市政権にも死角はある。