なぜ「N=1」のニーズを深掘りするのか

■ステップ①:体験に基づく「N1ニーズ」を見つける

「N1ニーズ」とは、不特定多数ではなく、特定の「たった1人」のユーザーを深く観察することで見えてくるニーズのことです。私は、このN1ニーズを起点に考えることで、他にはない独自性や独創性を持ったアイデアが生まれると考えています。

 ここで言う特定の1人のユーザーとは、「自分自身」です。

 ではなぜ、「N=1」のユーザーを自分自身とするのか。その理由は明確です。世界で自分のことを100%知っている人間は、自分だけだからです。つまり、自分のニーズを最も深く、正確に把握できるのは自分だけなのです。

 そして、そのN1ニーズをアイデアに活かすポイントは、私やあなたとまったく同じ人は他にいないけれど、「似たような属性を持つ人は必ず存在する」ということ。例えば、

◎40代、育児中、中小企業経営者
◎20代、独身、都市部在住の会社員
◎60代、早期退職、地方移住……など

 生い立ちや興味関心、仕事や暮らしの環境が近い人たちは必ずいます。ですから、自分のニーズを満たせれば、同じような属性を持つ人たちのニーズも満たせる可能性が高いのです。これが「N1ニーズ」から発想するメリットです。

 一方、一般的なマーケティング手法でアンケート調査を実施し、様々な属性の人の意見を集めると、どうしても平均値に近づいてしまいます。平均値から生まれる発想は多くの人の関心を集めるかもしれませんが、ユーザーの属性が広すぎたり、コンテンツ内容が浅かったりして、結果的に誰にも響かないものになってしまいます。

 また、インタビュー調査を基に特定のペルソナをイメージし、発想していく方法もあります。私も以前その手法で発想し、写真アプリを開発しました。しかし、結果は失敗に。写真アプリのメインの利用者である女子大生をインタビューして回ったのですが、どうしてもユーザーの気持ちになりきれず、うまくいきませんでした。