顧客ニーズをつかむ「マジックナンバー3」

「N1ニーズ」を見つけるためには、N1である自分と向き合う時間が必要です。そのため、「自分の時間を作る」習慣や工夫がほしいところです。

 私は、次の2つのやり方でその時間を作っています。ここで紹介するのは、私の例なので、参照しながら自分なりの習慣に組み直してみてください。

【N1ニーズを見つける2つの方法】
1.週に1回「自分と向き合う時間」を作る
いつ:毎週木曜日の夕方以降
目的:アイデア出しや思考の整理、本を読むなどのインプット
工夫ポイント:まずは、「週に1回1時間」から始めてみる

2.歩く
いつ:悩みごとが増えたとき
目的:歩きながらパッと出てくる、何かしらの「いいアイデア」をつかむため
工夫ポイント:最寄り駅の隣~自宅まで、会社から隣駅まで、近所をぐるりと1周など、歩くルートを決めて、悩んだらすぐに行動に移せるようにする。また、歩いているときは、音楽を聴くことで頭がほぐれ、アイデアが浮かびやすくなることも

 しかし、いつもN1ニーズが有効なわけではありません。特に法人向けのビジネスの現場では、自分がニーズの当事者ではなく、クライアントのニーズに応えなければいけないシーンがほとんどです。

 そんなとき、私は「マジックナンバー3」と呼んでいる手法を使います。これはクライアントと似た属性の「3社」にヒアリングして共通ニーズを見つける方法です。

 例えば、取引先A社に「困りごとを教えてください。改善します」とヒアリングします。ただし、1社のニーズに応えるだけでは受託開発になってしまい、汎用性がありません。そこで2社目、3社目のヒアリングから、「共通の課題」を導き出すのです。

 法人向けプロダクトに完璧は存在しません。そのため、今よりも効率を上げて、コストを下げる方法は必ずあります。3社に共通するニーズがあれば、それは一定の市場性を持った課題だと判断できます。

 法人向けビジネスには大きな利点があります。それは、取り組むうちにその分野の専門家になれること。1社目から得た知見は、2社目で語ることができ、これを繰り返すと、課題への解像度が上がり、より的確な提案ができるようになるのです。

【「マジックナンバー3」 を活用した共通ニーズの導き方】
(ステップ)
1.クライアントと似た属性の企業3社にヒアリング
2.それぞれの「困りごと」を収集
3.3社に共通するニーズを抽出
4.共通課題を基にプロダクト/施策を設計

(ポイント)
◎1社だけ:「専用開発」になり、汎用性がない
◎2社だけ:「比較」にとどまり、共通項が特定しづらい
◎3社:「共通項」が浮き彫りになり、一定の市場性が見えてくる

(第4回に続く)

程 涛(てい とう)プロフィール
issin株式会社 代表取締役CEO/連続起業家
1982年中国・河南省生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)卒。2008年東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻の修士在学中、研究成果のpopInインタフェースを基に、東大のベンチャー向け投資ファンド「東京大学エッジキャピタル(UTEC)」の支援を受けて東大発ベンチャー、popIn株式会社を創業。2015年中国IT大手のBaidu(百度)と経営統合。2017年世界初の照明一体型3 in 1プロジェクター「popIn Aladdin」を開発。4年間でシリーズ累計販売台数25万台を突破し、異例のヒット商品となる。2021年4月issin株式会社を創業。同年6月にpopIn Aladdin版「スイカゲーム」を開発。12月にNintendo Switchソフト「スイカゲーム」を発売し、累計1200万DLを突破し大ヒットゲームとなる。2022年4月日常生活に溶け込む体重計「スマートバスマット」をリリース。『日経トレンディ』(2022年12月号)の「2023年ヒット予測ランキング」で「ステルス家電」として2位にランキングされる。3年間で10万ユーザーを突破。2022年8月popIn株式会社代表を退任し
、issin株式会社のビジネスに集中する。