AI時代の「働く」のゆくえ
筆者が副業サラリーマンの取材を始めたきっかけは、「ホワイトカラーがエッセンシャルワークに取り組む」という意外性に加え、そこにある種の“希望”も感じたからである。副業をする中高年男性の葛藤には、何というか「エモさ」があった。
というのも、ホワイトカラー×副業の中高年男性は、副業で取り組んだブルーカラーやグレーカラーの仕事を嫌がっているわけではなかったのだ。
とある中小企業の営業マンの男性は、子どもの教育資金を稼ぐために夜の冷凍倉庫で副業をしていたが、そこで「仲間ができた」と話し、過酷な労働の中に本業とは違う充実感があることもにじませていた。ほかにも「運動不足の解消になる」とか「人からありがとうと言われてうれしい」とか、働くことの意味について考えを巡らせていた人が多かった。
「『働く』ってもともとは、『傍(はた・隣の人)を楽にする』っていう意味だよね。でも、最近はそうじゃなくなっているよね」
以前取材した建設作業員の男性がそんなことを言っていたのを思い出す。テクノロジーに奪われ続ける仕事、私たちの「働く」はどこへ向かおうとしているのだろうか。
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若月澪子(わかつき・れいこ)
NHKでキャスター、ディレクターとして勤務したのち、結婚退職。出産後に小遣い稼ぎでライターを始める。生涯、非正規労働者。ギグワーカーとしていろんなお仕事体験中。著書に『副業おじさん 傷だらけの俺たちに明日はあるか』(朝日新聞出版)がある。


