ホワイトな環境を求めてホワイトカラーになる人々

 転職の動機や、転職後の収入を見ていくと、転職の目的が必ずしも年収アップではないこともわかる。

 転職後に年収が上がった人は30人中14人、変わらない5人、不明1人で、10人は年収が下がっている。給料が下がっても転職を断行する人が3分の1もいるのだ。

 彼らは「ハラスメント」「社風が合わない」「精神的・肉体的にきつい」など「モームリ」な状態で職場を去っている。中には転職後に年収が100万円以上ダウンしている人もいた。
 
 特にグレーカラーの人の職場への不満は高い。顧客対応などの「対人関係」に加え、鉄道会社の人は「夜勤がきつい」と回答。心や体を壊してまで「働いて×5」とは思っていない。

 このアンケートから読み取れるのは、転職者の多くが「ワークライフバランス」や「働きやすさ」を重視している点だ。ところが人手不足が深刻なのは、「仕事がきつい」とされるブルーカラーとグレーカラーである。

 現役のブルーカラーである自動車整備士(39)に話を聞いたところ「やりがいはあるが、20代は離職する者が多い」という。自動車整備士は既定の訓練を受けて国家資格を取る必要がある専門職だが、過酷な肉体労働であり、職人気質の職場はパワハラが横行しやすく、報酬面でも不満があるようだ。

「自分の年収は350万円だが、先輩を見ていると40代になっても昇給する気配がないし、体力的に年を取ってからも続けるのは難しい」

 一方でホワイトカラーは、フリーランスや派遣などの非正規化が進んでいる。にもかかわらず多くがそこにしがみつこうとしている。

 さらに言えば、私たちの社会では人が集まりにくい、人がやりたがらない仕事を社会的に弱い人、女性やシニアや外国人労働者に「押し付けている」ような現実がある。エッセンシャルワークに対しての「リスペクト」が極めて乏しい。