延命措置の現状は「グレーゾーン」
北村:リビング・ウイルとは、死期が近づいたとき、延命措置を拒否するという本人の意思を証明するものです。現在、延命措置の拒否については、法的にはグレーゾーンにあたりますが、「延命措置を拒否する」と本人が医療機関に対して強く意思表示できる書類のことを指します。
私たちは、終末期医療でリビング・ウイルを提出したとき、医療機関はその患者の自己決定権を尊重できるような法律を求めています。
当協会の調べでは、医師に対して「延命措置を拒否する」と示した際、それが実際に受け入れられる確率は7〜8割ほど。望まない延命措置を受ける人たちが約2〜3割存在するのは、家族の反対と、訴訟と事件化を恐れる医療機関、という2つの理由に大別されます。
家族の反対については、例えば親が元気な時に延命措置は拒否する、と書いていたけれども、実際に苦しそうな姿を見て、家族が延命措置をお願いするといったケースが存在します。
また、本人の意思による延命措置の中止が法的に担保されていないことから、善意で動いた医療機関が後で訴訟リスクを抱える可能性もあります。延命措置を中止する際はご家族も納得していたのに、後で訴えられる、という形ですね。
もっと言えば、医療機関が延命措置をしなかった場合、事件化する恐れもあります。
延命措置の現場では色々な学会が出す「ガイドライン」が参照されるばかりで、法律がない分、医療従事者は本当の意味では守られていません。「ガイドラインに書いてあるし、(本人の意思を尊重して延命措置を中止しても)普通は起訴されることはないと思うよ」といった判断では心許なさすぎます。
やはり医師の免責事項を記載したリビング・ウイルの法制化は必要です。
──尊厳死の法制化、というテーマは取り扱いが難しく「財源論で語るべきではない」「同調圧力を作り出してしまう」という批判の声もあります。