クリスマスが近いが、ドイツの懐具合は良くはない(写真:ロイター/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
フリーフォールと形容されたドイツ経済
ドイツ産業連盟(BDI)は12月2日に公表した報告書「Industry Report December 2025」において、ドイツの2025年の鉱工業生産が前年比▲2.0%になるという悲観的な分析を示した。
BDIのペーター・ライビンガー会長は声明文の中で、ドイツの経済を「フリーフォール(自由落下)」状態と表現し、産業界救済のための取り組み強化を求めたことが報じられている。今年3月時点では同▲0.5%との見通しであったため、想定の4倍のスピードで企業活動が縮小したことになる。
今年2~3月と言えば、メルツ政権が債務ブレーキ法の棚上げと共に5000億ユーロ規模のインフラ基金創設を発表したタイミングであり、ドイツ経済ひいては欧州経済が上げ潮ムードに包まれていた頃でもある。
会長の声明文では「ドイツは経済拠点として自由落下状態にあるが、ドイツ政府は十分に決定的な対策を取っていない」と政府の対応に不満を表明。「断固たる構造改革をしないまま歳月が経過するごとに雇用と繁栄はさらに失われ、政府の将来の行動の余地は著しく制限される」と当局の対応を糾弾している。
あくまで現在のドイツ経済低迷は「循環的な景気後退ではなく、構造的な衰退」とも断じており、悲壮感はかなり強い。
ドイツ経済がここまで悲惨な状況に至った原因は1つではないが、やはり①ウクライナ戦争に伴うエネルギーコスト急騰、②原発停止に伴うエネルギーコスト急騰、③対中関係悪化に伴う外需先の喪失という3点が決定打だろう。
例えば、下の図表に示すように、鉱工業生産を例に取った場合、米国や日本は2019年から2020年にかけて水準が切り下がった後、おおむね横ばいが続いたが、ドイツはパンデミックの年(2020年)こそ微増で乗り切っているが、その後は下落基調に入り、2022年以降は「フリーフォール」との形容も大げさではない鋭角的な減少に直面している。

なお、日本はそもそもの生産水準が低迷しているという別次元の状態にあり、しかも2024年には折からの円安インフレの影響なども背景に一段と切り下がっている。今回は割愛するが、ドイツだけでなく、日本も由々しき状況にある。