国政選挙前になると偽アカウントの認証価格が急騰
2024年夏から翌夏までに行われた世界61件の国政選挙について、投票日前30日間のデータを調べた結果、その国のTelegramやWhatsAppといったメッセージングアプリの偽アカウント認証価格が急騰する傾向があることが確認された(Telegramで平均12%、WhatsAppで15%上昇)。
FacebookなどのSNSとは異なり、メッセージングアプリは電話番号が可視化されることが多いため、現地(選挙が行われる国)の電話番号を持つアカウントが必要とされる。そのため現地のSIMカードへの需要が高まり、価格が上昇するというわけだ。
一方でFacebookやInstagramでは、選挙前と価格の間に同様の相関は見られなかった。これらのプラットフォームでは、ある国で登録した偽アカウントを別の国の話題に使い回せるためである。
こうしたSNSが工作に利用される場合、たとえばロシアで登録された安価な偽アカウントを使って米国の選挙に関する投稿をするなど、「規制のゆるい国に活動の重心を置きつつ、規制の厳しい国の利用者・アカウント市場からも収益を上げ続ける」という構図が確認された。
COTSIは、こうした影の経済圏を価格データという形で「見える化」することで、偽情報キャンペーンの活動を把握し、そのビジネスモデルを解体する第一歩になると、研究者らは主張している。
たとえば英国は、2025年4月に欧州で初めてSIMファームを違法化する法律を成立させており、COTSIを使えばこうした法規制の効果を世界的にモニターできるという。
実際、COTSIのデータを監視することで、オンライン上での世論操作を「発生後」ではなく「発生前」に把握できるかもしれない。