トンネル内で楽しめる5種類のCG

 もちろん北越急行もこの状況は予測できていた訳で、ラッピングトレインや車内や駅でパンや菓子などが味わえる「パン列車」などを運行。2015年以降は「はくたか」に代わり、表定速度88.6kmで走る日本一速い快速「超快速スノーラビット」を運行したり(2023年に廃止)、逆に超低速でカメのように走る団体臨時列車「超低速スノータートル」を運行するなどし、より多くの乗客に楽しんでもらえるよう奮闘している。なかでもオススメなのが2003年に登場した「ゆめぞら」だ。

「ゆめぞら」とは日本初のシアタートレインで、トンネルに入ると車内の天井が突然巨大スクリーンに変貌する。

現在は2008年にデビューした「ゆめぞらⅡ」の車両で運行されている

 ほくほく線は列車の高速化と時間短縮を目的に建設されたため、沿線の山々をいくつもの長いトンネルで貫いている。それゆえ景色があまり楽しめず車内が長い時間暗いことを逆手にとって、トンネル内でコンピュータ・グラフィックスで作った映像を上映することにしたのである。

 上映トンネルは魚沼丘陵~しんざ間、十日町~まつだい間、まつだい~ほくほく大島間、ほくほく大島~虫川大杉間、うらがわら~大池いこいの森間の計5ヶ所。映像は「花火」「天空」「海中」「星座」「宇宙」の5種類だ。

美しい映像が天井を彩る。写真は「海中」

「ゆめぞら」は普通列車のため乗車券だけで乗車できる。毎週日曜日のみで、運行する列車は往復で4本なので、事前に調べてから乗車しよう。また運行される列車は2両編成だが、直江津寄りの赤い車両が「ゆめぞら」で、越後湯沢寄りの青い車両では上映されないのでお間違えのないように。

 さて実際に乗車してみると人気のようで、座席は結構埋まっている。じっくり見たいなら始発駅から乗車すると良いだろう。トンネルに入り天井を眺めていると、突然きらびやかな映像が浮かび上がり、ダイナミックな音楽とともに臨場感たっぷりだ。ストーリーに沿ってめくるめく展開される映像に没入してしまい、時の経つのを忘れてしまう。列車がトンネルから出ると、残念にすら思うほど。

座席上に設置された多くのプロジェクターとスピーカー

 日本には各地にレストラントレインやトロッコ列車などの観光列車が走っているが、このような体験ができるシアタートレインは「ゆめぞら」のみ。時間に少しゆとりを持って、夢の空をみながら北陸へ向かうのも良いのでは。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)