「A列車で行こう」の車両はキハ185系という国鉄時代に造られたもので、JR九州をはじめ鉄道各社のデザインを担当している水戸岡鋭治氏によって大胆にリニューアルされている
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(山﨑 友也:鉄道写真家)

乗車することを目的としたD&S(デザイン&ストーリー)列車

 いわゆる普通の特急列車でさえ、九州には色も形もひと味違う、乗ってみたくなるような楽しそうな列車がたくさん走っている。なかでも個性的で地域の特色を詰めこんだ列車をJR九州では「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と呼び、沿線の風土や車窓などが味わえる、乗ること自体を目的とした列車として各地で運行している。

 今回紹介するのは三角線を走る観光特急「A列車で行こう」。この名はアメリカのジャズの曲名として有名で、ビリー・ストレイホーンが1939年に作曲した名曲だ。A列車とはニューヨーク地下鉄8番街線を走る急行系統のことなのだが、そんなことや曲名を知らなくても、おそらくメロディを聴けば誰もがうなずくほど、世界各国に認知されている曲である。

 さて、三角線の終点三角は天草の玄関口。そこで16世紀に天草に伝わった南蛮文化を列車のテーマとして、天草(AMAKUSA)と、ヨーロッパをイメージした大人(ADULT)の旅を演出する列車ということで「A列車で行こう」という「D&S列車」が誕生した。ニューヨーク地下鉄と三角線の接点はほとんどないのだが、「A列車で行こう」という列車は大人が愉しめる旅がコンセプトであるため、車内や駅ではジャズの「A列車で行こう」が頻繁に流れているのが特徴である。

有明海と雲仙普賢岳の絶景を見ながら列車は走る