インフレはドラッグのようなもの?
インフレ時には、借金をしている人間が得をする。あるドイツ人は、借金して土地を買ったが、翌年、その土地から収穫したジャガイモの半分も売らずに借金を返すことができた。一方、貯金は紙くずになった。
とりわけ悲惨だったのは、給料の変わらないホワイトカラー、そして年金生活者だった。外貨や金銀プラチナを持っている人間は資産を保全できたが、やがて外国為替管理委員が組成され、それらを見つけ次第、押収できるようになった。マルク安で株価は上がり続けたが、実質の株式指数は下がる一方だった。
「インフレーションとは、いろいろな意味でドラッグのようなものだ」ベルリンのイギリス大使館で館長を務めていたダバーノン卿は、そう書いている。「最後には命取りになるとわかっていても、多くの困難に襲われたとき、人はその信奉者になってしまう」
もちろんインフレは、悪いことばかりではなかった。「インフレーションが起こるだけで、政府は返済せずに負債を消すことができるし、戦争をしたり、他の非生産的な活動に大きな規模で携わったりすることもできる」からだ。その言葉の通り、ドイツは再び戦争へと向かっていった。
渡辺裕子(わたなべゆうこ)グロービスでリーダーズ・カンファレンス「G1サミット」立上げに参画。事務局長としてプログラム企画・運営を担当。面白法人カヤックを経て、インタビューライティング、ブックライティングを中心に活動中。
各界の読書家が「いま読むべき1冊」を紹介!—『Hon Zuki !』始まります
(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長)
この度、読書好きの同志と共に、JBpress内に新書評ページ『Hon Zuki !』を立ち上げることになりました。
この名前を見て、ムムッと思われた方もいるでしょうが、まさにお察しの通りです。2024年9月に廃止になった『HONZ』のレビュアーだった私が、色々な出版社から、「なんで止めちゃうんですか? もったいないですよ!」と散々言われ、「確かにそうだよな」と思ったのが構想のスタートです。
私、個人的に「読書家の会」なる謎の会を主催していて、ただ定期的に読書家が集まって方向感もなくひたすら本の話をしています。参加資格は本好きな人という以外特になくて、私がこの人の話を聞いてみたいと思える人というかなり恣意的なのですが、本サイトの基本精神もそんな感じにしたいと思っています。
簡単に言えば、本好きという自らの嗜好に引っ張られ、書かずにはいられないという内なる衝動を文章にしたサイトというイメージです。もっと難しく言えば、カントの定言命令のように、書評を書くことを何かの手段として使うのではなくて、書評を書くことそれ自体が目的であるような、熱量の高いサイトにしたいということです。
それでまずオリジナルメンバーとしてお声がけしたのが、『HONZ』の名物レビュアーだった仲野徹先生と『LISTEN』の発掘で一躍本の世界の中心に躍り出た篠田真貴子さんです。まあ、本好きという共通点を持ったタイプの違う3人と思って頂ければ結構です。
ジャンルとしては、基本はノンフィクションで、新刊かどうかは問いませんが、できるだけ時事問題の参考になるものというイメージです。レビュアーの方々には、とりあえず3カ月に一回くらいは書いて下さいねとお願いしています。
少し軌道に乗ったら、リアルでの公開講演会とかYouTube動画配信とかもやっていきたいと思っています。出版社の方々とも積極的に連携していきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。