アラスカ州にあるアイエルソン空軍基地に並ぶ「KC-135」輸送・空中空輸機(11月12日、米空軍のサイトより)
ウクライナ戦争と台湾有事
欧米とロシアの兵器はどれほどの性能差があるのか――あと2か月あまりで5年目に突入するウクライナ戦争は、この問いに答を出しつつある。
ロシアと欧米の兵器の戦いの結果が映像などで世界に伝えられて研究され、一つひとつの兵器における能力差が証明されてきたからだ。
このコラムで何度も触れてきたが、とりわけ防空兵器はその差が著しいといえそうだ。
ウクライナのミサイルを撃ち落とせずレーダー基地などに大きな被害を受けている現状から、ロシア防空兵器は、公表されているような性能が得られていない可能性が高い。
一方、ウクライナの防空範囲内に入ったロシアのミサイルは、打ち漏らしがあるとはいえ多くが撃ち落されていることから、ロシア製防空兵器よりも性能が高いといえそうだ。
その差をロシアも認識しているのであろう。ミサイルより大きな標的となり、ウクライナの防空範囲に入ると撃ち落される危険性が高いロシアの戦闘機は侵入しようとしない。
安全に航空作戦を実施するために、防空範囲の外から空対地ミサイルの発射などの航空作戦を行っている。
今回は、ウクライナ戦争におけるロシアの航空機作戦から、万が一台湾有事が生起した場合、どのような事態になるのかを考察してみたい。
中国の戦闘機はロシア製をコピーして作られたものが大半である。中国独自の工夫が加えられているとしても、基本的な性能に大差はないと考えられる。
中国の防空兵器もロシア製とほぼ同等とみられるので、ウクライナ戦争で起きている防空作戦や航空作戦は、台湾有事の際にも似たようなものになると推定できる。
以下、「ロシアと同じような兵器を保有する中国軍が、台湾有事でどのような事態に直面するのか」についてシミュレーションしてみたい。