ロシア航空機の現状
ウクライナへの侵攻当初に、ロシア戦闘機・攻撃機は、ウクライナ国内まで入り込み、果敢な航空作戦を実施した。
だが、当初の2か月で200機に近い軍用機の損失を出した。その後、ロシア戦闘機はウクライナ軍の防空兵器射程内に入ろうとせず、射程外から滑空弾を発射するようになった。
現代戦ではウクライナ戦争で生起しているように、防空ミサイルが配備されている場合、その射程の中に入った戦闘機は撃墜されてしまう。これは何もウクライナ戦争だけではなく、防空兵器の性能と精度が高まった現代防空作戦では常識となっている。
図1左のように、ロシア機はウクライナ領内に侵入すれば撃墜される危険性が高いため、図1右のようにウクライナの防空兵器の射程外から滑空弾を落下させて、ウクライナ地上軍を爆撃している。
もしも、ウクライナ防空範囲を見誤ってロシアの戦闘機が防空ミサイル射程内に入れば、撃墜されてしまうことになる。
図1 ロシア航空機の作戦とウクライナの防空
中国の戦闘機はほとんどロシア製を導入
ロシアの戦闘機は、ウクライナ戦争において防空兵器があるところでは活動できていない。では、中国軍機はどうだろうか。
まず中国軍機の性能を評価するために、ロシアと中国が保有する戦闘機を比べてみた。「ミリタリーバランス2025」から筆者が抜粋して比較したものが以下の表1である。
表1 ロシアと中国の戦闘機の種類比較
| 分類 | ロシア機 | 中国機 | 中国機の解説 |
|---|---|---|---|
| 戦闘機 | Su-27 | Su-27 | ロシアから導入した機体 |
| Su-30 | Su-30 | ロシアから導入した多用途戦闘機 | |
| J-10 | 中国独自開発の軽量戦闘機(対応するロシア機なし) | ||
| 艦載・派生型 | Su-33 | J-15 | Su-33を元に中国が開発した艦載戦闘機 |
| J-16 | Su-30を参考に中国が開発した多用途戦闘機 | ||
| 戦闘爆撃機 | Su-34 | 対応する中国機なし | |
| Su-35 | Su-35 | 中国がロシアから導入した高性能多用途戦闘機 | |
| ステルス戦闘機 | Su-57 | J-20 | 中国初の本格ステルス戦闘機 |
出典:ミリタリーバランス2025より筆者が抜粋して作成
この表から分かるように、中国が保有する戦闘機はロシアからの輸入かロシア製を参考にして生産されたものが大半である。
ロシアからの輸入品については中国でもロシア機と同じ名称がついているが、性能については、輸出用であるため実際のロシア機より性能が落ちると考えてよい。
中国の「J-10」は独自開発して製造してはいるが、その性能はロシアの「Su-27」よりもはるかに落ちるとみられている。
最新の戦闘機でロシア機と中国機が異なるのは、ステルス戦闘機だけといってよい。
このように、最新のステルス戦闘機以外は、中国の戦闘機はその開発・製造をロシアに依存してきたことが分かる。
つまり、最新鋭のステルス機以外の戦闘機は、米欧の防空兵器の射程内では、いつでも直ちに撃墜される危険性が高いのだ。
