円安修正に動くべきは政府か日銀か?
より具体的に見ると、2024年初頭から足もとに至るまで、実質ベースで見た日米10年金利差はほぼ横ばい、もしくは若干の縮小という印象がある。もっとも、この間を振り返ると、2024年3月に日銀がマイナス金利を解除し、同年7月に追加利上げ、さらに同年9月にはFRBの利下げ局面も始まった。
2025年に入ってからも1月に日銀が追加利上げを行い、9月にはFRBが追加利下げに踏み切っている。
これに応じて、名目ベースでの日米金利差は著しく縮小したわけだが、両者のインフレ率に目を向ければ、2024年半ば以降は日本の方が米国よりも高い状態が続いてきたため、実質ベースで見た日米10年金利差はあまり動いていない。円安解消が進まない1つの理由と考えて差し支えないだろう。
要するに、日銀が早いペースで利上げしなければ実質金利差は縮小せず、その可否が今まさに問われているということだ。
もちろん、FRBが早いペースで利下げできれば、実質金利差は縮小するため円安が修正される余地はある。ただ、2025年に直面した「ドル安下での円安」を踏まえると、米金利低下に応じてドル安が進んだとしても、果たして本当に円高につながるのか。日本における奔放な財政・金融政策姿勢が円を忌避する一因になっているのであれば、やはり動くべきは日銀である。
具体的な実質金利水準と円安の間に確固たる関係があるわけではない。ただ、イメージ作りのために確認しておくと、円安が勢いづく前の2022年1月時点における実質10年金利は、日本は▲0.3%程度、米国は▲5.7%程度だった。ところが、本稿執筆時点(2025年12月時点)では日本は▲1.00%程度まで低下したのに対して、米国は+1.00%程度まで上昇している(図表②、③)。結果、実質金利差は著しく拡大しており、これが円安を駆動した疑いは強い。


なお、2022年は過去最大の貿易赤字(約▲20兆円)も重なっているため、需給構造の大きな歪みも急激に生じた。ちなみに、2023年は過去4番目、2024年は過去6番目に大きな貿易赤字であり、この3年間の円売り規模は史上稀に見るものだったと言える。