変化する規制環境と「持続可能性」の課題
ただし、この超低価格EC市場を取り巻く環境は、アマゾンがHaulを開始した2024年秋と比べて大きく変化している。
米国では2025年5月、トランプ政権が中国および香港からの輸入品に対し、デミニミス・ルールの適用を停止した。
これにより、同制度を利用して関税コストを回避していたTemuやSHEINのビジネスモデルは大きな打撃を受け、戦略の見直しを迫られている。
アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は当時、自社のHaulへの影響は軽微との見方を示していたが、市場の前提条件が変わったことは確かだ。
英ロイター通信は、トランプ政権による関税導入が結果的に消費者の購買心理を冷え込ませ、より安価な商品を求める傾向が強まったとも指摘しており、低価格帯の需要自体は根強いとみられる。
市場アナリストは、アマゾンのこの動きを冷静に見ている。
例えば、イーマーケターはHaulやBazaarでの販促キャンペーンについて、「アマゾンECサイト全体のブラックフライデー・セールなどと比べ、規模がかなり限定的だ」と指摘。
「HaulやBazaarは、現時点でコスト削減や倉庫の自動化を推進する中でのヘッジ(リスク回避)の側面が強く、本格的な賭けとは言えない」と分析する。
今後の焦点は、この低価格モデルの「持続可能性」となる。
各国でデミニミス規制の見直しや強化が進む中、アマゾンが中核ビジネスのブランドイメージを維持しつつ、この新たな低価格市場でいかに収益性を確保していくのか。その戦略の真価が問われることになる。
(参考・関連記事)「米アマゾン、食品PBで攻勢 5ドル以下の新ブランド投入で節約志向層狙う | JBpress (ジェイビープレス)」