「FRBの利下げだけで円安相場が終わる可能性は低い」

 この期に及んで拡張財政と金融緩和が継続されれば、ドル相場の動きはさておき、「円はやめておこう」という話にならないだろうか。

 そもそも2022年3月に始まった円安局面においては「FRBの利下げが始まれば……」、もしくは「日銀の利上げが始まれば……」という日米金利差縮小への期待が円高反転の契機になると言われ続けてきたが、結局円安は収まっていない。過去2年弱で日銀は利上げ局面に、FRBは利下げ局面に入ったのにもかかわらず、だ。

 仮に我々が直面している円安の背景が異常に低い実質金利や外貨の流出しやすい需給構造だとすれば、FRBの利下げだけで円安相場が終わる可能性は低い。特に、日本の実質金利については高市政権下で「修正される望みは薄い」というのが市場予想の中心となっているので、FRBの利下げがもたらす円高効果も減殺されやすいのではないか。この点については次回以降の本欄で論じたい。

 いずれにせよ、「ドル安下での円安」が一過性の現象なのか。それとも為替市場に現れた新常態なのか。2026年はそれを見極める年になる。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年12日1時点の分析です

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中