新常態になりつつある「ドル安下での円安」
この状況を打開する方法は1つではないが、まず金融市場は、①高市政権からの情報発信においてリフレ政策からの変節が相応に確認されることを望むだろう。その上で、②円の実質金利が2022年以前の水準に回帰するほど大きな日銀利上げが行われ、③貿易収支赤字も現在の改善傾向が続いていることなどが求められる。
③に関しては相応の期待が持てるとしても、拡張的なマクロ経済政策運営を志向する現政権に対し、①や②は確度の高いシナリオにはならない。
2026年も「ドル安下での円安」という現象は継続するのか。「ドル離れ」という極めて強力なドル売り材料が注目される状況でも円高相場は定着しなかったため、直感的に円安の反転は一段と難しくなったようにも感じられる。為替市場にはトルコリラやアルゼンチンペソなど、ドル相場の動向にかかわらず常に脆弱な通貨は存在するため、一定の不安は抱いて然るべきだろう。
もちろん、2025年の円が経験した「ドル安下での円安」は「ドル離れ」という特殊な理由に駆動されたドル安相場だったからこそ起きたという考え方もある。「安全保障面・経済面で米国と強固な結びつきにある日本の円だからこそ一蓮托生で連れ安になった」という解釈だ。
むしろ、このタイプのドル安・円安は稀であり、FRBが利下げを重ね、米金利とドルの相互連関的な下落が始まれば円高は定石通り期待できるという考えも一理あるだろう。トランプ色の強い新たなFRB議長が誕生する2026年だからこそ、そのようなシナリオに賭ける市場参加者も多いかもしれない。
しかし、本当にそうだろうか。周知の通り、10月以降の円安を駆動しているのは高市政権発足を受けたリフレトレードである。FRBの挙動がどうあれ、それは高市政権に対するリフレトレードを止める理由にならないだろう。