*イメージ写真です(写真:HTWE/Shutterstock)
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 タイ人の12歳の少女の人身売買事件が、今月発覚した。警視庁によると、少女は6月に母親とともに来日。来日当日にマッサージ店に連れて行かれ、そのまま勤務し始めた。男性客らを相手に性的サービスを提供させられており、60名余りの男性がその客になったとみられる。

 この事件発覚後、「12歳少女」「タイ人」「母親が娘を売った」等など、センセーショナルな報道が目に付く。日本における人身売買の実態はどうなっているのだろうか。

タイ人少女を働かせた店のオーナー、人身売買ではなく労働基準法違反で摘発

 本事件では、店のオーナーはまず11月4日に「労働基準法違反」の疑いで逮捕され、さらに同月25日、「風俗営業法違反」の疑いで再逮捕されている。今後の捜査次第ではあるが、本稿執筆時点では、「不同意性行為等罪」「児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、「売春防止法」、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」「人身取引事犯」等で摘発されたわけではない。

 摘発を受けて事件を報じたメディアの中には、「人身取引」などの見出しで報じたところも多いが、今のところ店のオーナーの逮捕容疑に「人身売買の疑い」などはない。

 一方、少女を日本まで連れてきて、店に置き去りにした母親については、タイ警察が、人身取引とわいせつ行為あっせんの容疑で逮捕状を取ったと発表している。日本警察がこの母親に対して用意している逮捕状は、児童福祉法違反の疑いによるものだという。

 わが国では2005年6月に刑法の一部改正案が成立し、人身売買罪が新設された。だが、その後、「人身取引事件」が摘発されても、人身売買罪で逮捕・起訴されることは稀であった。現在開会中の国会でも、人身取引につき、様々な議論が為されている。