女性が性欲を満たすには、愛情と信頼関係に加え精神的安定という3つの条件がそろっていることが肝心だという。画像は喜多川歌麿画 「納涼美人」
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連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

 未婚の女性の大方の関心事は、いかに理想的な異性を射止めることではないだろうか。

 明治維新以降、性欲は慎むべき、忌避すべき、警戒すべきものとの風潮が定着。

 だが、性欲の抑圧する流れは、生物学的に見て実に不自然なことである。なぜなら、人間には性的な満足を追究する根源的な本能があり、それは時として性的衝動として発動するからだ。

 性行為は生物的・心理的においても、健康を維持する重大な影響要因といわれる。

 その根源には生命の自然発生的な、純粋なる生命現象の境地とされ、一つの超越するものの力が秘められている。

 だが、本人の意思に反して、性的行動が繰り返されることもある。その情動はいかに抑えるべきなのか。

女性を満足に導くのが男の役目

 女性の多くが、「もっと綺麗になりたい」とファッションやメイクにこだわり、女性らしさを追究し、妍を競う。

 その心理は「異性の歓心を買いたい」という欲求であり、そうした願望は性的欲望を内包するものである。

 その背景には、承認欲求を満たし愛情充足を図りたい、感情的な距離を近づけたい、理想の相手を籠絡し優越感と快感に浸りたい、などがあるのだろう。

「恋愛」は「性欲」のうちであり、根本的には人間の生命感に由来し、平和と幸福の中に顕れる感情である。

 官能美の集約である「極快感(エクスタシー)」とは、『オックスフォード英語辞典』によれば、「湿り気を帯びて、ふくらむこと。刺激されること。あるいは興奮すること」とある。

 性愛行為がもたらす「歓天喜地」は生理的・心理的現象のみではなく、相手との共感的な感覚、相互が自己を脱却し、官能によって理解し、歓喜し合う。

 女性の性欲は排卵期間にピークを迎え、宇宙のリズムである月経周期によって性的欲望のレベルが上下を繰り返す。

 結婚と性のカウンセリングのパイオニア、奈良林祥医学博士はこう語っている。

「文化の発達が人間性を蝕むとき、私たちはセックスに人間性の回復と解放を求める」

「セックスは人と人との触れ合いが基本で、触れ合っていることで、肉体を通じて会話している」

「女のよろこびと満足を最優先させ、その結果として、男がはじめて男としての無上のよろこびと幸せを体験させてもらえる」

「女性が性欲を満たしていけるためには、2人の間の愛情と、信頼関係と、それプラス精神的安定の3つの条件がそろっていることが肝心である」

 江戸南町奉行・大岡越前守忠相が、母親に「女はいつまで性的欲望が続くのか」とたずねた際、母親は黙って火鉢の灰をかき回したとされる。

 これを見て、「女は骨になるまで、つまり死ぬまで性欲は尽きない」と越前が覚ったという話は有名だ。

 おそらくは大岡越前守忠相の父・大岡忠高は、妻である忠相の母と、房事の際、肉体を通じて会話し、脇役に徹して、妻に女のよろこびを満足させていたに違いあるまい。