日本はどうか。決して「小国」ではない。人口は1億2300万人いるし、軍事費のランキングでは第10位(8兆3700億円)に位置している。ただし、核兵器は保有していないし、低成長率と人口減少が続く現状は「大国」とは言い難い。国際関係論の専門家は現在の日本を「ミドルパワー」と呼ぶこともある。「縮みゆくかつての大国」、あるいは「中規模国」といったところが日本の現状であろう。

 かといって過度に悲観する必要はない。日本は世界最強の経済と軍事力を持つアメリカと強固な同盟関係にあるからだ。

 同盟関係には国力の強い「シニアパートナー」と、相対的に国力の弱い「ジュニアパートナー」が存在する。日本は「ジュニアパートナー」である。米兵が沖縄で問題を起こしても日米地位協定によって処分が不十分に終わることがある。これは「ジュニアパートナー」の抱える悲哀である。「シニアパートナー」に守ってもらっている以上、あまり強くは抗議できない。そのことと引き換えにアメリカには日本の防衛義務があるのだ。

 したがって、悲しいかな、日本単体としては中国とは対等ではないのである。相手は成長を続ける人口14億人の軍事大国で、こちらは縮みゆく中規模国。残念ながら、「対等にケンカ」できる相手ではない。むしろ、今の中国と「対等にケンカ」できるのはアメリカくらいである。日本ができるのは米中対立の中ではアメリカ側につくことのほか、台湾の民主主義を支持することはもちろん、できれば中国内の民主化勢力を支援することくらいである。やれることはそれほど多くない。

 国力の差からいって、日本は中国を相手として「正面切ったケンカ」はやるべきではなく、例えば「インド太平洋」といった概念を提唱して外交を多角化させるとか、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を拡大してより大きな自由貿易圏を作るとか、あるいは防衛費をGDP比で増大させるなど、現在の日本が取り組んでいる外交・防衛政策を地道にこなすくらいしか、やれることはないのである。

 何より、日本の最大の貿易相手国は中国である。訪日客の2位は中国人観光客(71万人)。中国人は日本に87万人おり、在留外国人の中では最多である。中国との経済関係が途切れたら困る人は日本に多くいる。