「山の名探偵」が推理する区間新記録の攻略法

早大・工藤慎作

 早大・工藤慎作(3年)は1年時の全日本大学駅伝で“挫折”を味わったが、約2か月後の箱根駅伝で本領を発揮する。

 山上り区間の5区で8人抜きを披露。「山の名探偵」と呼ばれるようになったのだ。そのときのタイムは1時間12分12秒で区間6位だった。

 前回は1時間9分31秒で区間2位。1時間9分11秒の区間新記録を打ち立てた青学大・若林宏樹に届かなかった。

 そして今回は「区間新」をターゲットにしている。

「5区を2回走って、前回は区間記録に20秒差まで来ました。課題はわかっているので、そこを改善することで区間新だけでなく、68分台も射程圏内だと思います。早稲田のストロングポイントとして狙っていきたい目標です」

 2月の丸亀国際ハーフマラソンで日本人学生歴代2位の1時間0分06秒をマークして、7月のワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンで金メダルを獲得。11月の全日本大学駅伝は8区で日本人最高記録を塗り替えるなど、走力は確実にアップしている。

 では、箱根5区“攻略”のポイントはどこに置いているのか。

「改善するのは大平台から小湧園の定点間。特に宮ノ下を過ぎた後の坂が一番課題かなと思っています。城西大・山本唯翔選手と自分はそこで30秒近い差がある。その差を詰めることで大きくタイムを更新できる計算ですし、逆にいえば他の部分は高水準だと思うので、そのきつい傾斜を攻略できればいいかなと思っています」

 大平台(7.0km地点)から小湧園前(11.7km地点)の4.7kmを1時間9分14秒の区間記録(当時)を打ち立てた城西大・山本唯翔(現・SUBARU)は16分35秒で走破している。一方、工藤は前々回が17分39秒、前回が17分08秒。山本とは33秒の開きがあった。

 あくまで単純計算だが、課題である大平台と小涌園前の4.7kmを30秒短縮して、他の16.1kmを前回と同タイムでカバーできれば、区間記録は1時間9分01秒になる。

  若林が保持する1時間9分11秒の区間記録はもちろん、史上初となる1時間8分台が見えてくる。しかも早大の戦力を考えると、往路優勝のチャンスも十分。アシックスのシューズを履いた「山の名探偵」がドラマをつくる。