災害発生時、ドローンはどんな威力を発揮する?
小回りが利き、対象にかなりの近距離まで接近できるドローンは、とくに発災直後に大きな力を発揮するとされています。
言うまでもなく、発災時の救助活動で最も大切なのは初動です。ドローンは航空機やヘリよりも遥かに低い位置を飛ぶため、特定の被災箇所を確認する作業に向いています。
光学カメラだけでなく、赤外線カメラや微弱電波を検知可能な機器を使えば、逃げ遅れた被災者の早期発見も可能。さらに道路状況の詳細な把握なども可能で、特定エリアの「被災マップ」を早期に作成することができ、初期の救助活動に力を発揮します。また、救助活動側の二次被災を防止できるのも大きなメリットです。
こうしたドローンの効果が確認された最近の実例は、石川県を中心に大きな被害を出した2024年1月の能登半島地震です。内閣府がまとめた「能登半島地震を踏まえた有効な新技術」によると、
① ドローンによる3次元データや360度画像などの取得により、被災状況の詳細な把握や火災発生の早期確認が可能だった
② 能登町では往復で約1時間かかる危険な山道を使うことなく、安全に物資を輸送
③ ドローンに携帯電話基地局の機能を持たせたうえで、地上約100メートルの上空に滞留させ、半径数キロの範囲で通信可能エリアを確保できた
などの活用が報告されました。
2024年1月の能登半島地震におけるドローンの活用事例(図:フロントラインプレス作成)
さらに発災から日にちが経過して威力を発揮したのが、自治体による家屋の被害認定調査です。被害の大きかった珠洲市では、調査がなかなか進みませんでしたが、ドローンを飛ばし、様々な角度から約300棟の被災家屋を撮影。そのデータを熊本地震での復興経験を持つ熊本市役所に転送し、熊本からリモートで被害認定調査を実施したのです。
一方、発災時に最前線で活動する各地の消防でも、ドローンの活用が急速に広がっています。消防庁が全国の消防本部を対象に実施している調査によると、2021年6月時点でドローンを「活用している」のは全国で383本部、割合は52.9%でした。その5年前は70本部、9.6%。跳ね上がりが顕著です。2021年時点でドローン未活用とした341本部についても、その4割近くが導入予定ありと回答しています。
こうしたなか、各地の消防でいち早く「ドローン隊」を創設した神奈川県大和市の取り組みが注目を集めています。大和市は2016年に起きた熊本地震の教訓を得て、ドローンが消防の活動に極めて有効と判断。翌2017年から本格運用を始めました。現在は市内5つの消防署に10数台のドローンを配置しています。各機はいずれも主導操縦ですが、最大の特徴は操縦士の多さ。いつでも誰でもドローンを操縦できてこそ、いざというときに役立つという考えに基づき、消防職員262人のうち実に213人が国の登録パイロットとなっているのです。