世界における欧州の今

 では、この革命の発生源である欧州は今日、どのような状況にあるのだろうか。

 欧州連合(EU)の人口は4億5000万人で、インドはもとより中国と比べてもかなり少ないが、米国よりはかなり多い。

 また購買力平価(PPP)ベースで見た経済規模は、米国や中国にはかなわないが、それでもまだかなり大きい。

 だが、昨年秋にまとめられた「ドラギ・リポート」やルイス・ガリカーノ、ベント・ホルムストローム、ニコラ・プティ3氏が先日発表した論文「イノベーションの憲法」で指摘されているように、EUとユーロ圏は生産性の面で後塵を拝している。

 欧州はまた、経済や人口関連の資源ではロシアをはるかに上回るものの、米国の防衛力の傘に頼らずに自らの安全を保証するためにそれらの資源を動員するのは容易でないことに気づいている。

 細分化の歴史ゆえに、EUは1つの主権国家ではなく、複数の主権国家で構成される口論の絶えない集まりになってしまう。だがそれでも、ひょっとしたらEUはやらねばならないことをやれるかもしれない。

 上記の論文が論じているように、これが「単一市場」の約束だった。

 これはとにかく一生懸命やるしかない。安全保障問題についても同じことが当てはまるという主張も可能だろう。