細分化された状態が続いたワケ

 その後、欧州が細分化されたままだったのはなぜなのか。その答えは地理、すなわち山地と海にあるように思われる。

 多くの人口を養うことができ、それゆえ高い税を払うことができる肥沃な地方は、大きすぎることもなければ互いに近すぎることもなかった。ローマ帝国の相対的に高い軍事効率が再現されることもなかった。

 西欧諸国は19世紀と20世紀に劇的な経済成長を遂げた。

 2022年の1人当たり実質国内総生産(GDP)は200年前の19倍に膨らんでいた。平均寿命も1820年の36歳から2020年の82歳に延びた。

 革命は欧州から世界各地に広がった。

 19世紀後半以降は米国が世界一の経済大国になっている。近年では、中国が著しい発展を遂げてきている。世界は様変わりした。そして以前よりもはるかに豊かになった。

 科学技術の進歩は、世界全体で熾烈な競争が始まる可能性も開いた。その影響は甚大だ。

 最近まで、1つの大陸を占有するほど広いと同時に科学技術も進んだ経済と言えば、米国経済だけだった。ソビエト連邦もそうなろうと試みたが、軍事部門を除けば失敗に終わった。

 しかし、今では中国がそのような大国になっている。インドもそうなるかもしれない。

 ということは、今やあの「瓶」は欧州ではなく世界であり、最も危険な類いのサソリが昔の帝国と同じ規模に育っていることになる。実際、その一角を担う中国は昔の帝国の典型例だ。