要注意のイラク情勢
イラクでは11日、国会(定数329)選挙が実施された。2003年のフセイン政権崩壊以降、6度目の総選挙だ。
スダニ首相が率いる政党連合「復興開発連合」が第1勢力になったが、過半数に届かなかった。首相2期目を目指すスダニ氏を中心に連立政権樹立の交渉が進むが、協議が難航する可能性があるとみられている。
2022年に政権を発足させたスダニ氏は、米国とイランの間で「バランス外交」を展開して中東情勢の安定化に寄与するとともに、国内の治安も改善してきた。
だが、イラク政治の悩みの種である汚職問題の解決は道半ばだ。スダニ政権は汚職対策を進めてきたものの、国民の不信は払拭できていない。劣悪な公共サービスへの不満や失業難から各地でデモが発生しているのが実情だ。イラク国内で活動する複数の親イラン民兵組織も頭の痛い問題だ。
「原油価格は年末に向けて下落が続く」と筆者は考えているが、油断は禁物だ。産油国の動向について、引き続き最大の関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
