米国の制裁がロシアの石油産業に打撃
中国の10月の原油輸入量は前年比8.2%増の日量1140万バレルと好調だった。 一方、米国のガソリン需要は低調だ。米国の10月のガソリン需要は前年比4%減の日量873万バレルと、10月としては3年ぶりの減少となった。物価高などにより消費者の節約志向が強まっていることが災いしている。
需給面とともに原油価格に影響を与える地政学リスクの動向は依然として不透明だ。
米国の制裁はロシア石油産業に大きな打撃を与えている。
ロイターは10日「ロシア石油大手ルクオイルがイラクの油田で不可抗力を宣言した」と報じた。10月に同社が米国の制裁対象に加えられたため、イラク政府がルクオイルに対して同国の西クルナ油田から産出した原油の輸送船への積み込みや代金の支払いを停止したからだ。イラク石油省は「不可抗力条項発動の原因が6カ月以内に解消されなければ、ルクオイルは同油田での生産を停止し、完全撤退する可能性がある」としている。
ロシア産原油の買い控えの動きも強まっている。ロイターは10日「ロシア産原油を積極的に購入してきたインドの石油企業が12月積みでサウジアラビア、イラク、クウェートなどからの輸入を増加させる意向だ」と報じた。
このような状況を踏まえ、前述のIEAは「ロシアの原油生産に下振れリスクが生じている」との認識を示している。ロシア産原油価格の割引幅も拡大しており、ロシア財政への打撃は甚大になっている。
ウクライナのドローン(無人機)攻撃も止む気配がない。ロイターは6日「ロシア南部ボルゴグラード州のルクオイルの製油所がドローン攻撃で操業を停止した」と報じた。同製油所は昨年、ロシアの精製総量の5%強の原油を処理したという。
市場はこれらをほとんど材料視していないが、事態がさらに悪化すれば、原油価格が急騰する可能性は排除できない。
筆者が注目しているのは、OPEC第2位(日量約400万バレル)のイラク情勢だ。