周到な広報戦略、「AI」を「先進技術」に

 一連の報道で注目されたのは、アマゾンがこの自動化推進による社会的な反発を想定し、周到な広報(PR)戦略を準備していたことだ。

 米シーネットなどが報じた内部文書では、雇用の喪失が懸念される地域社会での反発を緩和するため、地元のパレードや慈善活動「トイズ・フォー・トッツ(子供たちへのおもちゃ寄付活動)」への参加を増やすことで、「良き企業市民」としてのイメージを構築する案が検討されていた。

 さらに、「オートメーション」「AI」「ロボット」といった直接的な表現を避け、代わりに「先進技術」といった曖昧な言葉や、人間との協働を連想させる「コボット(協働ロボット)」という用語の使用が議論されていたことも明らかになった。

「協働」路線からの転換か

 この「雇用代替」計画は、アマゾンがこれまで公式に掲げてきた「人間とロボットの協働」という理念との間に、大きな矛盾が生じる。

 同社ロボット事業のタイ・ブレイディCTO(最高技術責任者)は7月、「ロボットは従業員に取って代わるものではなく、彼らの身体的負担を軽減し、より安全にするためのものだ」と強調していた。

 同社は、単純作業をロボットに任せ、人間はより高度な「ロボット技術者」へと移行するアップスキリング(技能向上)の事例も紹介してきた。

 しかし、今回の報道で指摘されたのは、こうした「協働」という理念とは異なる計画だ。

 マッシャブルによれば、アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)率いる経営陣は、取締役会から「より少ないリソースで、より多くの成果(do more with less)」を出すよう強い圧力を受けている。ウォール街のアナリスト、ジャスティン・ポスト氏も「ここ3年で会社の焦点は(成長から)効率化へとシフトした」と指摘する。