課題に取り組む学生たち

教育は知識伝達型から思考設計型へ

 特に印象的だったのは、ある学生が語った言葉です。

「少し曖昧な指示でも想像以上に良い出力が返ってきた。最後までAIと会話しながら作れた」

 その姿は、もはやAIを使う人ではなくAIと共に考える人でした。彼らにとってChatGPTはツールではなく、思考のパートナーだったのです。

 私はこの構図を、AI時代の教育の核心だと考えています。従来の教育は、知識を再現することに重きを置いてきました。しかしChatGPTが示したのは、知識を再構成する力です。

 つまり、AIが情報を補完し、学生自身が文脈と目的を設計する力を育てるのです。

 これは知識伝達型教育から、思考設計型教育への転換といえるでしょう。この流れは、企業にとっても無関係ではありません。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない理由の一つは、多くの組織がAIを使える人材を育てようとする一方で、AIと共に考えられる人材を育てていないことにあります。

 ChatGPTを活用するには、コーディングスキルよりも、目的を正確に定義し、思考を言語化する力が求められます。

 プロンプト設計とは、言い換えれば思考のデザインなのです。今回のコンテストは、その力を最も純粋な形で試す場でした。

 金賞を獲得したチームは、「人間:ChatGPT=2:8くらいが良い」と助言されていたにもかかわらず、あえて「0:10」でAIだけに委ねました。

 一見すると極端な選択ですが、その試みから見えてきたのは、AIに指示を出す人間側の精度が出力を決定づけるという現実です。

 彼らは「プロンプトに必ず具体例を入れる運用に変えたら精度が一気に上がった」と語っていました。