「第1回 変革のためのGPTsコンテスト」。撮影は筆者、以下同じ
AIが問う人材育成の本質
2025年11月5日、東京大学の学生団体「AI-LINK」とAI企業のDXHRが共同で開催した「第1回 変革のためのGPTsコンテスト」は、単なる学生イベントではありませんでした。
そこには、AI時代の教育と人材育成の本質をめぐる新しい問いが生まれていたのです。
テーマは「日本のローカル飲食店GPTs」。
日本を訪れる外国人観光客が、メニューを理解できずに困るという現実の課題を、学生たちが米オープンAIが提供している生成AI、「ChatGPT」のカスタム版である「GPTs」を使って解決するというものでした。
与えられた開発時間はわずか1時間。
外部APIの利用はあえて禁止され、純粋にChatGPTの拡張機能のみで構想から完成までを競う形式です。
結果として、短時間で「いますぐ使える」レベルのAIアプリが次々に生まれました。
この光景を目の当たりにして、私はAIの教育的意義を改めて感じたのです。私は40年近く企業経営に携わってきましたが、これほど発想から実装までの距離が短くなった時代はありません。
1990年代に私が初めてオブジェクト指向プログラミング言語「Java」を触った頃、プログラムを動かすには数十行のコードと環境設定が必要でした。
それがいま、学生がChatGPTにこんな体験を作りたいと打ち込むだけで、自然言語からスクリプトが生成され、即座にプロトタイプが動くのです。
この「創造の民主化」こそ、生成AI時代の最も大きな変化だと感じます。コンテストでは、各チームが現実の課題をAIと共によく理解していました。
宗教的な食材制限を考慮し、料理名から自動的に食材・味・文化背景を説明するチーム。
画像からピクトグラムを生成し、言語を超えて理解を促すチーム。
中国人観光客に特化し、接客文化の違いまで学習させたチームもありました。
それぞれの発想には、単なる技術実験を超えた人に寄り添うAIの視点があったのです。