プライベートクレジットが震源地に?
ブラックロックはプライベートクレジットでも煮え湯を飲まされている。
ブルームバーグは11月11日「住宅修繕企業レノボ・ホーム・パートナーズが突然破産申請を行ったため、ブラックロックのプライベート債権全額が焦げ付いた」と報じた。
このような不祥事が相次いだため、プライベートクレジットのリスクを警告する声が相次ぎ、ファンド業界幹部は非常に神経質になっている。
世界の中央銀行も警戒モードに入りつつある。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は10月下旬、プライベートクレジット関係者が異口同音に「すべて順調だ」と説明する様を目のあたりにして、約20年前のサブライム住宅ローン危機を想起させると警告を発した。
プライベートクレジットへの疑念の高まりを受けて、英銀HSBCホールディングスは10月末からヘッジファンドとの関係を見直し始めている。
背景にあるのはヘッジファンドのハイリスク投資への警戒感だ。
米連邦準備理事会(FRB)は11月7日に公表した金融安定報告書で、ヘッジファンドのレバレッジ(リターンを高めるための負債活用)指標はデータが比較できる2013年以降で最高になったと警鐘を鳴らした。
イングランド銀行もヘッジファンドによるリスク投資がもたらす将来の危機への備えが不十分であるとの認識だ。
気がかりなのは、日本にもプライベートクレジットが徐々に浸透していることだ。
これまで邦銀の壁に阻まれていたが、プライベートクレジット業界はアジア進出の一環として日本での活動も本格化させている。だが、ファースト・ブランズ・グループの破綻で日本の投資家も既に損失を被っている。
「転ばぬ先の杖」ではないが、リスク管理に万全を尽くすべきではないだろうか。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
