危ういサブプライム自動車ローン、ウォール街は火消しに躍起
サブプライム自動車ローン債権を証券化した資産担保証券(ABS)を市場で売りさばいていたトライカラー・ホールディングスが9月に破綻したため、ABSを購入していたJPモルガン・チェースやブラックロックなどの大手金融機関が痛手を被った。
2008年のリーマンショックの大元の原因がサブプライム不動産ローンの破綻だったこともあり、市場で「二の舞になるのではないか」との不安が広がった。
これに対し、ウォール街は火消しに躍起だ。
ゴールドマン・サックス・グループのソロモンCEOが10月末、トライカラー・ホールディングスと米自動車部品企業ファースト・ブランズ・グループの破綻で表面化した不安について「金融市場にシステミックリスクは生じていない」と断言するなど、ウォール街首脳は金融不安を一蹴している。
だが、金融市場が今後も安泰であり続ける保証はないと思う。
金融市場の中で最も警戒が強まっているのがプライベートクレジット(ファンドによる企業融資)の分野だ。
高利回りが期待できるプライベートクレジットの市場規模は1兆7000億ドル(約260兆円)に膨らみ、商業銀行の企業融資(約410兆円)に迫る勢いだ。プライベートクレジットを裏付けとしたローン担保証券(CLO)の発行も急増しており、金融商品としての存在感が高まっている。
だが、サブプライム自動車ローンと同様、プライベートクレジットの貸し出しの杜撰さが問題になっている。
前述のファースト・ブランズ・グループの不透明な簿外ファイナンスを投資家が不安視する状況で、経営破綻前に最後に資金を投じたのは、プライベートクレジット(ストラテジック・バリュー・パートナーズ)だった。プライベートクレジットは繰り上げ返済条項などを用いて強力な貸し手の保護を確保できるとアピールしてきたが、リスク管理の甘さを露呈してしまった形だ。