国民が求めている「多党化」

安野:議員定数の削減に端を発した選挙制度改革の議論を煎じ詰めると、「二大政党を目指すべきか、多党化をよしとするか」という価値観の衝突に行き着くのだと思います。

 1994年の小選挙区制導入は、金満選挙などの様々な問題を解決し、アメリカや英国を参考に二大政党を実現しようというのが目的でした。二大政党の方が、民主主義が本来持っているポテンシャルを活かせるのではないかと考えたのでしょう。

 ところが、日本では「多党化」の流れが強まっています。自民と立憲民主党の二大政党の存在だけでは多様な民意を拾いきれなくなっているのです。

 私は多党化は時代の必然だと思います。94年当時と比較しても、現在は国民の価値が多様化しました。SNSの登場で様々な発信・意見に触れることが多くなるとともに、グローバル経済の拡大で生活・仕事双方で価値観が細分化しています。

 こうしたメガ・トレンドを踏まえると「二大政党のどちらかを選挙のたびに託す」という方法は、すでに国民の支持を失っていると思います。チームみらいを含め、先の参院選でベンチャー政党が躍進した理由は、「国民が多党化を求めているから」に他ならないのです。

多党化は「時代の要請」だ(写真:共同通信社)

 このような現実を踏まえても、衆院選の比例定数を削り、小選挙区の重要性を高めるという動きは時代にも国民の要求にも逆行しているのではないでしょうか。

 もちろん、多党化が進めば進むほど国会の意思決定が遅くなり、議会運営に支障をきたすという批判には正当な面もあります。ただ、最近のガソリン減税の6党合意に象徴されるよう、今までは自民党の部会の中だけで決まっていたアジェンダが、複数の政党が議論して決めていくというやり方に変わったのは、むしろ民主主義的だと思います。

 効率性云々を議論するのであれば「本会議の形式的な選挙を、3秒で終わるところを1時間かけている」ことなど、議会運営をもっと効率化することを優先すべきです。

──安野さんも2025年の参院選で比例当選しましたが、やはり民間人が国政に進出するのは相当ハードルが高いと実体験でも思われますか。