「議員定数削減」は実現するか?(写真:共同通信社)
高市政権と閣外協力する日本維新の会は、衆院議員定数の1割削減を要求している。具体的には比例区から選出される50議席ほど減らすという方針だが、「少数政党潰しだ」という批判の声も上がっている。選挙制度に詳しい政治学者の河村和徳・拓殖大学政経学部教授は今回の案を「自分たちが痛まない『身を切る改革』だ」とする。どういうことか。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
自らは痛まない「身を切る改革」
──高市総裁率いる自民党と日本維新の会による連立政権合意書には、「衆院議員定数の1割の削減」と記載されています。維新の藤田文武共同代表は「比例でバッサリいったらいい」とするなど本気度は高いように見えますが、河村さんはどのように見ていますか。
河村和徳氏(以下、敬称略):「衆議院の議員定数の1割削減、それも比例から」という案を日本維新の会が提示したのは党利党略と言われてもしかたないでしょう。
同党は比例代表からの選出が他党より少なく、お膝元の大阪では小選挙区で強い。「身を切る改革」に代表されるよう、既得権の打破を掲げる維新にとって、自らの身をあまり切らずに“改革”をアピールできると判断したのかもしれません。
それに長期的にみれば、人口減少が緩やかな都市部を地盤とする維新は、北海道や東北、九州で強い政党よりも定数削減のダメージは少なくてすむ。
河村 和徳 拓殖大学政経学部教授 1971年、静岡県生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。専門は政治学。東北大学大学院准教授などを経て2025年4月から現職。『電子投票と日本の選挙ガバナンス』(慶応義塾大学出版会)など著書多数。
──政局を考えたとき、維新はなぜ議員定数の削減にこだわるのでしょうか。
河村:ひとつには、維新の求心力が落ちていることが考えられます。
本丸の「身を切る改革」においては、大阪府・大阪市で議員の数を削りすぎており、改革をアピールできる余地が少ない。
さらに同党が躍進した2010年代は「若手が古い政界にデジタル的な発想を持って切り込む」という姿勢が支持されていましたが、今や自民党も若返りしつつあるし、国民民主や参政党とデジタル・若者路線で差別化できるほどではない。
要するに、維新が従来の「改革イメージ」をわかりやすく発信できる手段がなくなってきているのです。
そこで彼らが“改革する党”と全国的に認識してもらうための策としたのが、大阪でも行った「議員定数の削減」、そして、自民党が妥協できる「比例」から削る、というものだったのでしょう。
──高市首相がかつて「私は中選挙区制論者だった」と語っていたという報道があったことを考えると、小選挙区比例代表並立制にはさほどよいイメージを持っていなかったのでしょうか。
