議員定数削減に反対するチームみらい党首・安野貴博氏(撮影:湯浅大輝)
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高市政権と閣外協力する日本維新の会が要求した「衆院議員定数の削減」。定数を1割、比例から削減するという方針のようだが、批判の声も上がっている。2025年の参院選で比例当選したチームみらい党首・安野貴博氏もそのひとりだ。「比例から削ると、新人議員が国会に入りにくくなる」と危機感を強める安野氏に話を聞いた。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

比例は小選挙区より「3倍以上」新人に有利

──日本維新の会が要求した「衆院議員定数の1割削減、比例から」という案に、安野さんは反対されています。10月18日のXの投稿は、1000万以上のインプレッションを集めるなど関心も高いですね。

安野貴博氏(以下、敬称略):今回の案で私が最も危惧しているのは、比例をターゲットに定数を削減する点です。新人議員が当選しにくくなり、国会の新陳代謝が悪化するという懸念を持っています。

 元々、小選挙区は新人が受かるハードルが極めて高いという特徴があります。事実、2024年の衆院選で小選挙区で勝った新人議員は約11%。約9割が現職、または国政経験者が当選しているという計算になります。

 一方、国民の多様な意見を拾い上げることを目的に導入されている比例代表において、当選した新人議員は約36%。小選挙区の方が比例より3倍以上も新人にとって狭き門になっているのが現実です。

 このような状況下で比例のみにターゲットを絞った定数削減を行うと、私のようにこれまで政治に縁がなかった人たちや新興政党がさらに当選しにくくなるわけです。

 私もゼロから政党を立ち上げ、誰も教えてくれない中で参院選で当選しましたからよく分かりますが、いわゆる「地盤・看板・カバン」がない中で現職議員に勝っていくのは至難の業です。

安野 貴博 (あんの・たかひろ)  1990年生まれ。エンジニア。東京大学 松尾研究室出身。外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップ企業を2社創業。デジタルを通じた社会システム変革に携わる。日本SF作家クラブ会員。内閣官房デジタル行財政改革戦略チーム構成員。東京都AI戦略会議委員。新党「チームみらい」党首。

 こうした中、比例の定数をバッサリ削ると、国会議員の新陳代謝がさらに悪化することが目に見えています。

「隗(かい)より始めよ」で、政党と議員自身が身を切ることが重要だというのなら、歳費削減などの方法もあるはずです。それなのに、よりによって自民・維新の両党があまり痛くない比例から定数を削減するというのは、果たして「身を切る改革」になっているのかと疑問です。

 実際、参議院会館ですれ違う他党の議員さんからも「安野さん、よく言ってくれた。俺も安野さんと同じように思っていたよ」と言われています。新人ほど、今回の案には危機感を持っているのが現実でしょう。

──「SNS選挙」に顕著ですが政治不信が高まる中、昨今は雨後の筍のように新政党が乱立し、次々と当選しています。既成政党からしてみれば脅威と映るのも無理はないのかもしれません。