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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年11月1・2日付)

11月11日のニューヨーク証券取引所(写真:AP/アフロ)

 10月28日の午後、米国株は今年36回目となる史上最高値を更新したが、ポートフォリオマネジャーのジェイコブ・ソネンバーグ氏は祝う気分ではなかった。

 人工知能(AI)ブームと結びついたシリコンバレーの一握りの巨大テクノロジー企業の上昇に乗り、米S&P500種株価指数は前日より上昇して1日の取引を終えた。

 だが、これは指数を構成する397銘柄が下げたという事実にもかかわらず、だった。

 米調査会社ビスポーク・インベストメント・グループによると、過去35年間で、これほど多くの構成銘柄が下げた時に1日の取引でS&P500が上昇したことは一度もなかった。

「エヌビディアが現金をどんどん稼いでいることは理解している。それは分かっている。だが、それでもこの市場の集中が進む様子には深い懸念を覚える」

 カリフォルニアの投資会社アービング・インベスターズに勤め、テック銘柄に集中的に投資しているソネンバーグ氏はこう語る。

「約10銘柄のうちの1つに投資していなければ、お金を稼ぐのがとんでもなく難しい」

一握りの巨大テック企業が牽引するモメンタム相場

 半導体大手のエヌビディアが世界で初めて5兆ドル企業になった週に、一握りのビッグテック企業の市場支配がいよいよ際立つようになった。

 S&P500の時価総額上位10社のうち8社はテック銘柄だ。

 これら8社は米国株式市場の時価総額全体の36%、市場が4月に底値を付けて以来のS&P500の上昇の60%、そして昨年のS&P500企業の純利益の伸びのほぼ80%を占めた。

 野村のアナリストによると、10月29日までの5日間で見られたS&P500の約2.4%の上昇は、ほぼ完全にアルファベットとブロードコム、エヌビディアの3銘柄によってもたらされた。

 米グレイ・バリュー・インベストメントの最高投資責任者(CIO)、スティーブン・グレイ氏は「米国では、我々は明らかに、あからさまに疑わしいバリュエーションで取引されている一握りのテクノロジー企業が牽引するモメンタム(勢い)相場に入っている」と指摘する。

 S&P500が今年に入って約16%上昇したことから、「ただ目をつぶって流れに乗った投資家が大きな利益を得た」と付け加えた。

 個人投資家は「MSCI全世界株指数」に資金を投じれば多様なポートフォリオが手に入ると考えるかもしれない。

 だが、世界40以上の市場の2000社以上の企業で構成されている同指数は現在、時価総額の4分の1近くがわずか8社の米国テック企業で占められている。