京成スカイライナー(2010年に登場した2代目AE型/2014年筆者撮影)
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 新型コロナウイルスが収束し、インバウンドがV字回復を遂げている。外国人観光客が日本の第一歩を踏み出す玄関口は国内に点在する空港だが、その中でも成田国際空港(成田空港)は日本を代表する空港である。

 現在、成田空港から東京都心部までの鉄道アクセスは主に京成電鉄とJR東日本の2社が受け持っている。開港時より所要時間は大幅に減少し、運行本数も増えて格段にアクセスは向上したが、それでも利用者から「成田は遠くて不便」との声が絶えない。

 成田までのアクセスを改善するべく、これまで鉄道事業者や行政はどのような対策を講じてきたのか。そして、今後はどのようにアクセスを向上させるつもりなのか。フリーランスライターの小川裕夫氏が、その歴史を紐解きつつ、未完に終わった計画や今後の見通しなどについて解説する。

訪日外国人の急増で懸念される「輸送力不足」

 第2次安倍政権が推進したビザの緩和やアベノミクスによる円安などの影響もあり、2010年代に一気に増加した訪日外国人観光客。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年に急減したものの、コロナ収束後はV字回復。2024年は過去最高を更新し、2025年も史上最速ペースで推移している。それと同時に海外へと旅立つ日本人旅行者も復調傾向にある。

 訪日外国人が多く降り立つ成田国際空港(成田空港)は1978年に開港した。これは高度経済成長期に国際線需要の高まりを受けて、東京国際空港(羽田空港)のキャパシティが限界に達していたことから、新たな首都圏空港の必要性が高まったことが背景にある。

 当初から羽田空港を国内線、成田空港を国際線へと分離する目的があったが、成田は東京都心部から約60キロメートルも離れている。そのため、空港の整備計画には東京からの鉄道アクセスも含まれていた。

 現在、東京と成田を結ぶ鉄道は京成電鉄のほか、JR東日本が特急列車を運行している。

 東京都と千葉県をカバーする大手私鉄の京成電鉄は、京成上野駅(東京都台東区)をターミナルに成田空港までを結ぶ本線が主力だ。昨今は青砥駅から分岐して東京スカイツリーの近隣に位置する押上駅を結ぶ押上線も本線と肩を並べるほどの路線へと成長した。

 だが、訪日外国人観光客が急増している現在、今の体制では早晩輸送力が不足するとの懸念が絶えない。そうした事情を考慮し、京成は2025年5月に3カ年の中期経営計画を発表。その中で、「次期スカイライナーの検討」「新型有料特急の導入」「成田空港周辺の単線区間を複線化すること」に取り組む方針を明らかにした。

乗客でにぎわう成田空港の到着ロビー(写真:共同通信社)