それでもキャッシュマンGMは、必死に“穴”を探している。今季ドジャースの投手陣は先発ローテーションの崩壊危機を経験し、リリーフ陣も終盤に不安を残した。野手陣もフリーマン、ベッツ、マンシーと主力の高齢化が進んでいる。「どんな球団も黄金時代は永遠ではない。財務構造の歪みが出れば、再建のために誰かを放出せざるを得なくなる」――。

 くしくも米スポーツ専門局「ESPN」のインタビューでキャッシュマンGMは今季の総括として、このように意味深な言葉を残している。「ドジャース王国」に小さな亀裂が入る瞬間を、じっと待っているのだろう。

大谷とドジャースの固い結びつき

 ヤンキース内部では「西海岸のスターをブロンクスへ連れ戻せ」という合言葉が飛び交う。ニューヨークという世界最大の市場で、再びブランドを輝かせるために必要なのは“象徴”だ。かつて松井がそうだったように、そしてジーターがそうであったように、チームの魂を体現する存在――。それがいまや大谷翔平以外に見当たらない。

 振り返ればレジェンドOBである「ウォリアー」ことポール・オニール氏が昨年のワールドシリーズでドジャースに古巣が敗れた際、NYの地元メディアに対し「ヤンキースが真に復活するには、大谷のような選手が必要。大谷を獲得するか、あるいは彼に代わるような選手が現れなければ球団のブランドはもはやドジャースに完全に抜かれる」と語気を強めて警鐘を鳴らし、物議を醸したこともあった。

 一方のドジャースは盤石だ。アンドリュー・フリードマン編成本部長はMLB随一の戦略家として知られ、長期的な戦力管理を徹底している。若手有望株の育成、戦力の流動性、財務の透明性――いずれも他球団が羨むほど整備されている。大谷との契約も、まさにその哲学の結晶だ。

ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ )

「LAは大谷のホームであり、ドジャースは彼の居場所だ」。ナ・リーグのスカウトはドジャースの「一人勝ち」となっている現状を示すかのように、半ば諦め半分で断言している。「あの環境を離れることは、彼自身の哲学に反する。たとえどんな金額を提示されても動かないだろう」。それほどまでに、今の大谷とドジャースの関係は強固だ。