大谷獲得に2度失敗した名門球団

 かつて「帝国」と呼ばれたニューヨークの名門球団は、2009年を最後にワールドシリーズ制覇から遠ざかっている。16年という空白の歳月。ブロンクスの熱狂的なファンたちにとって、これは耐えがたい現実だ。

 西海岸のドジャースが2年連続で頂点に立ち、球団としてのブランド価値を高め続ける姿を見せつけられるたび、ヤンキース内部には焦燥と苛立ちが渦巻く。

 しかも昨年はワールドシリーズで直接対決しながらもドジャースに世界一奪回の夢を絶たれ、目の前で歓喜に沸く姿を見せつけられる屈辱も味わった。

 今季もリベンジを誓いながら、ドジャースと対峙することもできないままポストシーズン早々の地区シリーズで敗退。それでも「打倒ドジャース」「東の覇権奪還」を掲げながら再建のシナリオを練っている主要人物こそ、ブライアン・キャッシュマンGMである。

 キャッシュマン氏は1998年にGMに就任して以来、25年以上にわたり名門を率いてきた。MLBの中でも異例の長期政権だ。

ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM(写真:AP/アフロ)

 松井秀喜、田中将大、黒田博樹、イチローら、日本を代表するスターを数多くニューヨークに呼び寄せてきた功績は、ヤンキースの歴史に刻まれている。だが唯一手が届かなかった男――それが大谷翔平だ。

 過去2度、キャッシュマンGMは大谷獲得に失敗している。

 最初は2017年オフ。日本ハムからポスティングシステムでMLB挑戦を表明した大谷は、全30球団に「自分に対する評価」などを尋ねる質問状を送付。移籍先候補を西海岸の7球団に絞った。ところが当初「本命」と目されていたヤンキース、レッドソックスら名門はまさかの落選。理由は単純だった。「環境」と「距離」。若き大谷が重視したのは、野球に集中できる場所だった。だがキャッシュマンGMにとっては屈辱以外の何ものでもなかった。