「本人確認の仕組みを広告配信の世界にも導入すべき」
次に重要なのが、実質的なKYC(Know Your Customer)、つまりオンラインで活動する個人や企業に対して、「この人は誰であるか」を問題が起きたときにきちんと追跡できる仕組みを用意することです。
現在のインターネット広告のエコシステムでは、広告主の実態が不透明であり、問題が発生しても責任の所在を特定することが困難なケースが多々あります。広告を出稿する際に、実在性の確認や連絡先の明示をプラットフォーム側の責務として行わせれば、少なくとも詐欺被害が発生した際の追跡可能性を高めることができるはずです。
やっぱり、この手の犯罪をどうにかしようと思ったら、「こいつ誰やねん」を特定できる仕組みを少しでも入れておき、何かあったらすぐにその人の素性まで追いかけられるようにしないといかんでしょう。
その場合も、「日本で法人を立てていないと日本で広告は打てません」ぐらいの枠組みにしないと、詐欺広告の被害は収まらないのではないでしょうか。金融機関で当たり前に行われている本人確認の仕組みを広告配信の世界にも導入することが求められています。
さらに、場合によっては個人情報保護法やプラットフォーム取引透明化法を改正し、詐欺広告も含むウェブ広告全体を対象にした法整備の必要性も出てくるでしょう。現行法ではカバーしきれない領域が存在し、プラットフォーム事業者の責任範囲も明確ではありません。
もちろん、従前より広告と法律の世界では「広告は勧誘か」という深淵な法理の世界があって、テレビも新聞もしっかり広告考査をやってクソ広告はちゃんと排除するので、広告で詐欺被害が発生してもメディアは原則として免責されるという仕組みがありました。
業界団体を役所が押さえていれば右へ倣えで国内シェアの大多数が言うことを聞いてくれた、古き良き産業政策の名残とも言えます。
ただ、海外の広告詐欺がこれほど増えて、霞が関がそういう統制ばかり強めようとすると、言うことを聞かされる日本の企業ばかりが縛られ、やりたい放題やってくる海外の事業者が無視することで、単に日本企業だけがつらい思いをし儲け損ねる事態になりかねません。分かっとるのか経済産業省。
やはり、法改正によって問題の解決に取り組まないプラットフォーム事業者にはそれなりの課徴金を課せられる仕組みを導入することで、事業者側のインセンティブ構造を変えていくことが求められます。罰金額が詐欺広告からの収益を上回るような水準に設定されなければ、実効性のある抑止力にはならないでしょう。
◎デジタルプラットフォームの透明性・公正性に関する モニタリング会合 意見とりまとめ (デジタル広告分野)(経済産業省)
◎デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ(第3回)配付資料(総務省)