詐欺広告と認識しながら収益源にしているSNS企業

 メタ社は平均して1日あたり150億件もの「高リスク」詐欺広告、つまり明らかに詐欺の兆候を示す広告をユーザーに表示していると推計しています。なるほど、一応頑張ってはいるんだなと思うんですが、それでも起きている被害という点で言えばちょっと取り返しがつかないほど無法地帯になっているという指摘は成立するでしょう。正直、百鬼夜行過ぎてサファリパークで裸で寝てる方がまだ安全なんじゃないかと思うぐらいです。

 これは世界最大級のソーシャルメディア企業が、自社のプラットフォーム上で膨大な規模の詐欺広告を認識しながら、それを収益源として活用している実態を示すものです。SNS会社がそれなりに頑張って対策して、なお不正で儲けたい皆さんに大量のおカネが流れ出ているわけで、これはもう悪事をやったもん勝ちなんじゃねえのと思わずにはいられません。

 ロイターの報道によれば、メタ社は自動化システムが「広告主が詐欺師である確率が95パーセント以上」と判定した場合にのみ広告主を禁止し、それ以下の確信度の場合は高い広告料金を課すことでペナルティとしていますが、実質的には詐欺広告からの収益を得続けています。

「いますぐやめろ」と言いたいところですが、先方も「AIは詐欺っぽく判定してるけど実際にはまともかもしれない」のであれば割増で広告掲載するなら載せてやってもいいぞというビジネスになっているため、置き去りになっているのは当然ゴミのような広告を大量に見せられるユーザーの側であることは言うまでもありません。どうにかしろ。

 言い換えれば、詐欺の疑いがあっても確実性が95パーセントに達しなければ、より高い料金を取って広告を掲載し続けるという仕組みを、今のビッグテックやプラットフォーム事業者はSNS運用において認めているということです。それがゆえに、それをすり抜ける詐欺広告はいまなお大手を振って消費者被害を激化せしめ、日本でも年間1兆円を超える詐欺広告被害と推計される惨事になっていると言えます。

 メタ社の広報は「詐欺や詐欺広告と積極的に闘っている」と述べていますが、内部文書では、詐欺広告からの収益を2024年の10.1パーセントから2025年末までに7.3パーセント、2026年末には6パーセント、そして2027年には5.8パーセントに段階的に削減する計画が示されており、完全な排除ではなく緩やかな削減にとどまっています。

 さらに深刻なのは、メタ社が規制当局からの罰金を最大10億ドルと予想しているものの、内部文書では「6カ月ごとに、詐欺広告の中でも法的リスクの高いものだけで35億ドルの収益がある」と記されており、罰金よりも詐欺広告からの収益の方がはるかに大きいと認識している点です。このため、自主的に対策を強化するインセンティブが働きにくい構造になっています。

 これはもう、SNSにおけるデジタル広告の世界的な業界のあり方を根底から変えていかなければならないのでしょうか。ここで得た資金が地下経済に流れるだけでなく、反社会的勢力が不動産や証券を買って表の社会に出てきたり、兵器がたくさん作られてウクライナ人がたくさん戦場で散るようなことに直結したりしかねません。

 もちろん、メタ社に限らずオンライン広告の世界では、マルバタイジングによって広告を踏んだユーザーのパソコンやスマートフォンにマルウェアが送り込まれ、認証情報が盗まれる被害も発生しています。盗まれた情報は、日本企業や暗号資産交換所などに対するサイバー犯罪や、国家ぐるみのランサムウェア攻撃といったサイバー攻撃インシデントの入り口として悪用されています。

 こうした状況を受けて、日本政府も対策に乗り出しています。