「黒ラベル」「ヱビス」以外の打ち手が見えてこないサッポロ
そうなると、他社がサントリーの動きに追随するか否かも注目される。現時点では、キリンで言えば「淡麗」「本麒麟」「のどごし〈生〉」、アサヒでは「クリアアサヒ」「スタイルフリー」「アサヒ ザ・リッチ」といった発泡酒や第3のビールの商品群がビール化されるというアナウンスはないものの、年明け以降、商品によってはビールへのシフトが発表される可能性もあるのではないか。
ランサムウェアの急襲で足踏みを強いられたアサヒ、新商品投入や新戦略で勝機を窺うキリン、サントリーに対し、ここまで静かなのがサッポロだ。同社は収益的に大きかった不動産事業をオフバランス化して切り離し、酒類事業に集中していくことを宣言している。
2023年に糖質・プリン体70%オフの機能系ビール「サッポロ生ビール ナナマル」を発売しているものの、黒ラベルと「ヱビス」の2本柱以外に目立った新商品投入はいまのところない。
もともと同社はいたずらに新商品で戦線拡大していくことを良しとしない方針ではあるが、黒ラベルが若年層から支持を受けてはいるものの、プレモル同様、プレミアム領域のヱビスは好調とは言えず、なかなか次の打ち手が見えてこない。
サッポロがアサヒ、キリン、サントリーと異なるのは、通年販売ではないスタンダード領域の商品でコアなファンがいること。北海道エリア限定の「サッポロ クラシック」と、普段は飲食店専用商品で熱処理ビールの「サッポロラガービール」、通称“赤星”の2商品がそれだ。
右から「サッポロラガービール」「サッポロ黒ラベル」「サッポロ クラシック」
クラシック、ラガーとも数量限定などで年に何度か家庭用の缶商品がスーパーなどの店頭に並ぶこともあるが、通年販売には至っておらず、黒ラベル頼みの感は拭えない。サッポロも第3のビール「ゴールドスター」や「麦とホップ」をビール化するのか否かも含め、新たな戦略が必要になってきそうだ。