サッポロホールディングス代表取締役社長の時松浩氏(撮影:内海裕之)
サッポロホールディングス(HD)は、「恵比寿ガーデンプレイス」(東京・恵比寿)などの商業施設やオフィスビルを保有してきた不動産事業について、外部資本の導入受け入れを検討している。そんな経営のターニングポイントを先導するのは、2025年3月に代表取締役社長に就任(事業会社のサッポロビール代表取締役社長も兼任)した時松浩氏だ。果たして同氏はこれからどのような変革を進めていくのか、話を聞いた。
中途入社、オールラウンダーの「異色の経歴」
──時松さんはサッポロのプロパーではなく、新卒で入社したのは江崎グリコですが、就職の経緯やサッポロビールに転職した理由は。
時松浩氏(以下、敬称略) 大学時代はイベント系サークルに所属していたこともあり、マーケティングの仕事がしたいと思っていました。縁あって江崎グリコさんにお世話になり、入社後も希望通り新商品の開発や既存商品の販促などに携わることができました。
江崎グリコさんでは7年半ほど過ごし、サッポロに転職したのは1991年です。当時は販売免許をはじめ酒類の規制緩和が進んできたこともあり、酒類業界の競争に面白みを感じ、それまで自分がしてきた仕事で生かせることが多いのではないかと考えました。
──サッポロではビール、飲料、不動産事業など幅広い業務をこなしてきました。
時松 最初の配属は当時のサッポロ飲料(現・ポッカサッポロフード&ビバレッジ。以下ポッカサッポロ)で、6年ほど営業企画関連の仕事に携わりました。一度、営業のようなフロント部署でなく、経理や財務といったバックオフィスの仕事がしたいという希望を出し、3年ほど経理部でも仕事をしました。
経理部での経験は後々、かなり生きています。PL(損益計算書)でなくBS(貸借対照表)を読み込まなければ企業の本当の姿は把握できませんので、今でも社員には「フロント部門の経験だけでは足りない」と言っています。

──その後、2019年にサッポロ不動産開発社長、2023年からはポッカサッポロの社長も経験しました。
時松 不動産事業は当初、まったく違う企業に来たような感覚でした。ビールや飲料事業は基本的にフローのビジネスで、設備投資をしたら何年で回収するといったソロバンを弾きます。一方の不動産事業はストックビジネスであり、フローとストックとではビジネスの時間軸や投資の考え方も大きく異なります。
ポッカサッポロでは大胆な構造改革をしなければいけない時期でしたので、かなりのアセット(資産)処分をしてBSを改善しました。その結果、フローのビジネスを手がける会社として、ようやく昨年(2024年)末、ある程度の水準まで財務体質を戻すことができています。






