2023年10月の酒税改正で主戦場となるビールの酒税が引き下げられたこともあり、ビールメーカーの攻防が激しさを増している。その中でサッポロビールは今年、どのような形でビール商戦に臨んでいくのか。「黒ラベル」と「ヱビス」の2枚看板を持つ同社の野瀬裕之社長に、サッポロの強みや変革の行方について聞いた。
ヱビスを「東京ブランドのビール」として再定義
――今年(2024年)4月3日に、サッポロビールのお膝元である恵比寿(東京・渋谷区)でビールのブルワリー(醸造所)を開業する予定ですね。看板商品の1つである「ヱビス」の販売は昨年が前年比で横ばいと、やや足踏み状態でしたが、ブルワリーの開設はそこを打開していく起爆剤になりそうですか。
野瀬裕之氏(以下敬称略) 酒税が下がったビールへのシフトが進んだことで、いまスタンダードビールの領域にフォローの風が吹いています。昨今の物価高による節約志向などの中で、ヱビスのようなプレミアムビールまで手を伸ばさなくてもいいという意識が消費者の間に働いている気がします。
ヱビスは30年ほど前、“ちょっと贅沢なビール”というコミュニケーションをとり、実際にそういうポジショニングをうまく掴んできたわけですが、昔ならわかりやすかったプレミアムビールの意味合いが、現在は若干希薄化しているように思います。そのため、新しいチャレンジをして再定義していかなければならない時期に来ていると言えるでしょう。
ヱビスをプレミアムビールとして再定義するためには拠点が必要です。ヱビスは言ってみれば“東京ブランドのビール”ですし、商品パッケージにはあえて「BORN IN TOKYO」と刻印しています。東京の街の中でもお洒落で洗練され、活気があってアクティブで……という、恵比寿の街のイメージを象徴するようなブランドに変えていきたいと考えています。
ブルワリーオープンの前に、2月製造分から8年ぶりとなるリニューアルを行い、順次切り替えていきますので、新しいヱビスの味わいをお試しいただきたいと思います。併せて4月以降、ブルワリーの「YEBISU BREWERY TOKYO」へもお越しいただき、ここでしか飲めないヱビスや、ヱビスの新たな世界観を感じていただけたら嬉しいですね。いわば、今年は新しいヱビス元年という位置づけです。