北海道内はどこへ行っても「クマ出没注意」の看板が立てられている(筆者撮影)
全国でクマによる人身被害が止まりません。2025年度は単年度の死者数が統計開始以来、最悪となっています。JBpressではこれまで、クマとの向き合い方についてたびたび報じてきました。その中から厳選した記事をあらためてお届けします。なお、内容は掲載当時のものです。(初出:2024年6月23日)
30年で2倍以上に増加したヒグマの推定個体数
なぜ、こうもクマの出没件数が増えたのか。ひと言でいえばクマの個体数が増えすぎたからである。国の「クマ類保護及び管理に関する検討委員会」における主だった分析を抜粋してみよう。
【ヒグマ】
・春グマ駆除廃止による個体数増加・分布拡大、林業従事者や狩猟者の減少等により人への警戒心が薄れ、集落周辺まで分布域が拡大
・森林から連続する緑地や河川が市街地への侵入経路
・秋期の主要な食物資源の量が大きく低下する時に、行動圏が変化・拡大。食料を目指して低地や集落へ出没
【ツキノワグマ】
・林業や狩猟、里山利用の減少により、人への警戒心が薄れ、集落周辺まで分布域が拡大
・人口減少・高齢化による人間活動の低下、耕作放棄地の拡大、放任果樹の増加等により、人の生活圏周辺が生息に適した環境へ変化
・果樹等に誘引され、森林から連続する緑地を利用し市街地へ侵入
高齢化、林業の衰退、ハンター減少など共通項目が多い。はっきりしているのは、こうしたさまざまな要因が重なり、この数十年間でクマの個体数が飛躍的に増えたことである。
ヒグマは平成15年度と30年度の比較で、分布域は1.3倍に拡大し、推定個体数(令和2年度)は中央値1万1700頭で、30年間で2倍以上に増加した。
ヒグマ(知床、写真:travel Photo/a.collectionRF/アマナイメージズ/共同通信イメージズ)
ツキノワグマは本州、四国の33都府県に恒常的に分布(東京都にもいる!九州は絶滅)。平成15年度と30年度の比較で、分布域は約1.4倍に拡大した。
ツキノワグマの推定個体数については、「本州の多くの地域で増加または個体群は安定化」とあるが、具体的な頭数表記はない。過去の文献(2011年)には約1万3000頭から2万1000頭とある。それよりも増えているのは確かだろう。