クルマの内部情報が乏しいBEVの実態とは
エンジン車の場合、取扱説明書を読むと燃料残量警告灯が点灯したときにタンクにあと何リットル燃料が残っているかが書かれている。その数値はクルマによって異なるが、「あと4リットル残っているということは平均燃費リッター25kmで走れば50km先の行きつけのサービスステーションまで余裕でたどり着けるな」といった具合に、自分でリスクをコントロールできる。
BEVの場合、そういったクルマの内部情報が非常に乏しく、マージン幅の記載もない。想定通りにドライブが進まなかったときに0%になったら即停止という状況に陥るのを回避する設定自体はユーザーへの素晴らしい配慮だが、マージンがあまりに大きいのも考えモノだ。
ユーザーにとって本当に意味があるものは計器上の100→0%であって、その先にまだ使える領域がたっぷりあったとしても、ないのと同じだからである。
過去にテストを行ったBEVの中から計器上の100→0%容量の計算例を挙げてみよう。数値はいずれも直流急速充電の投入電力量と充電率の回復幅をもとに、充電ロスを8%と見立てて計算したものである。
「サクラ」(日産)諸元値20kWh→16kWh
「ソルテラ(改良前)」(スバル)諸元値71.4kWh→58kWh
「ドルフィン」(BYD)諸元値44.7kWh→45kWh
「コナ」(ヒョンデ)諸元値64.8kWh→62kWh
「アリア B6」(日産)諸元値66kWh→57kWh
「EX30」(ボルボ)諸元値64kWh→60kWh
改良前のスバル「ソルテラAWD」。トヨタbZ4Xと同型。公称487kmに対し、実績値は350km。ただしスタート地点からの標高差が900mほどあり、位置エネルギーを加味すれば390km程度になる(筆者撮影)
ヒョンデ「コナ Lounge」の公称航続距離は540kmだが、冷涼環境での実績値は420kmだった(筆者撮影)このような車両内部の制御はスペックシートなどできちんと公表し、あとはユーザーの自己責任とするのが本来あるべき姿だろう。
筆者は最初からテストとして乗っているから充電のたびにいちいち詳細にデータを取り、平均値を割り出してコンピュータがどのような制御を行っているかを推算しているのであって、個人ユーザーがそんな面倒なことをやらなければ自分のクルマの本当のところを知ることができないというのは改善の余地があろう。