トランプ大統領の過激な政策は、実はあるシンクタンクが作成した政策提言書が土台になっているのではないかと長く指摘されてきていた(写真:AP/アフロ)
政府機関を骨抜きにし、多様性を否定し、メディアを潰しにかかるなど、“過激”な政策を推し進めるトランプ米大統領。実はその裏に脚本があった。民間シンクタンクが作成した政策提言書「プロジェクト2025」だ。トランプ氏はこれまでかかわりを否定してきたが、最近、公に認めてメディアを驚かせた。政権運営に対する自信の表れなのか。今後、政策面でトランプ色がより鮮明となる可能性がある。
(猪瀬 聖:ジャーナリスト)
「プロジェクト2025」の提言と瓜二つのトランプ政策
「プロジェクト2025」は、著名な保守系シンクタンクのヘリテージ財団が2023年4月に公表。全約900ページにも及び、移民・国防、教育・福祉、経済を中心とするあらゆる政策分野で、共和党政権が実施すべき具体的な政策を書き記している。表紙に「リーダーシップの使命 保守の約束」と大きく書かれていることからも、その目的は明白だ。
トランプ大統領がこれまで実施してきた政策を見ると、プロジェクト2025の提言内容と重なるものが非常に多い。
例えば、トランプ氏は就任直後の今年1月27日、軍に関する4つの大統領令——トランスジェンダーの従軍の禁止、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムの廃止、新型コロナワクチンの接種を怠ったという理由で除隊させられた元兵士の復職、次世代ミサイル防衛システムの開発——に署名したが、このうち最初の3つはプロジェクト2025の提言そのものだ。
3月20日には、教育省の解体を命じる大統領令に署名した。トランプ氏の選挙公約でもあるが、プロジェクト2025も「連邦教育政策は限定的であるべきであり、最終的には教育省を廃止すべき」と提言している。
5月1日には、公共ラジオNPRと公共テレビPBSに対する政府の資金援助を打ち切るための大統領令に署名したが、これもプロジェクト2025の提言と瓜二つだ。