不法移民の一斉摘発に対する抗議デモを鎮圧するため、政府が軍の派遣を決めた頃から、SNSなどでは「#CalExit」(カレグジット)の投稿が目立つようになってきた(写真:ロイター/アフロ)
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 米カリフォルニア州で、米国からの独立を支持する世論が盛り上がっている。トランプ大統領が執拗に繰り返すいじめや嫌がらせともとれる行為に、リベラル派の多い州民の堪忍袋の緒が切れた格好だ。ITやエンターテインメント、農業など世界的に競争力のある産業を多く抱え、国にたとえると世界4位の経済規模を誇るだけに、あながち荒唐無稽な話にも聞こえない。果たして独立はあるのか。

(猪瀬 聖:ジャーナリスト)

州民の4割以上が賛成する「カリフォルニア独立論」

 XなどSNS上では、トランプ大統領が6月、不法移民の一斉摘発に対する抗議デモを鎮圧するためにロサンゼルスに軍の派遣を決めた前後から、「#CalExit」とハッシュタグを付けた投稿が目立つようになった。

 CalExit(カレグジット)は、英国の欧州連合(EU)からの脱退を意味するBrexit(ブレグジット)を真似た造語で、カリフォルニア州の米国からの離脱・独立を意味する。地元テレビ局は「ロサンゼルスの抗議デモがカリフォルニア独立論に勢いを与えている」と報じた。

 世論調査会社YouGov(ユーガブ)がトランプ政権が軍を派遣した直後に行った調査で、「カリフォルニア州が連邦政府との交渉を通じて平和的かつ合法的に米国から離脱する意思を宣言することに賛成か反対かを問う住民投票を、仮に今おこなったとしたら、あなたはどちらに投票しますか」と聞いたところ、州民の44%が賛成票を投じると答えた。

 反対は54%で賛成を上回ったものの、賛成すると答えた州民の割合は、2014年以降の同様の調査の中では過去最高となった。州内には実際に、2028年の住民投票で独立の賛否を問う準備を進めているグループもいて、そのために必要な署名活動を続けている。

 カリフォルニアで前回、具体的な独立の動きが起きたのは1846年のメキシコからの独立時にまで遡る。米国に編入される前の話だ。米国の州となってからは、独立に関心を持つ州民は一定の割合でいるものの、まじめに議論されたり具体的な動きが起きたりすることはなかった。

 状況が一変したのは、トランプ大統領の誕生だ。