ポートフォリオ見直しは年1回で十分
——GPIFポートフォリオでは少なくとも4つの金融商品を保有することになります。一般の投資家には、働きながら、価格を確認し続ける作業が重荷に思えます。
宇根:ポートフォリオの確認・見直しは年1回で十分です。
——GPIFのポートフォリオより高いリターンを上げるには何をすればいいのでしょうか。
宇根:もし、手間をかける余裕があれば年齢に応じて株式と債券の割合を調整するのが望ましいです。債券と株式は50:50が基本ですが、株式の割合を「100-年齢%」とするのです。これだと、若いほど株式の割合が高まります。若い人の場合、株価が下落しても回復までに時間の余裕がありますし、長く労働収入を得られるのでリスクも取れるからです。
——若い時期は収入が少ないのでは。
宇根:取れる範囲でリスクを取り、レバレッジを利かす、つまりは借金を活用して投資することにも一定の合理性はあります。たとえば、手元で投資できる資金が1000万円ある場合、200万~300万円を借り入れて、元本1200万~1300万円で投資をしてもバチは当たらないでしょう。しかし、一般投資家はそれ以上のレバレッジはかけない方がいいでしょう。レバレッジ3倍の信用取引はお勧めできません。
個別株にはロマン、でもインデックス投信で十分
——これまで投信を中心としたポートフォリオ実践術を聞いてきました。個別株の投資はいかがでしょうか。
宇根:証券アナリストの教科書では「効率的市場仮説」という論理があります。株式市場にはすべての情報が盛り込まれており、株価の予測は基本的に不可能で、よって超過リターンを得るのは不可能、という内容です。
しかし、ゆうちょ銀時代に世界のアクティブファンドのマネジャーと接する中で、ごくまれに、1割程度ですが、パッシブ投資(市場の平均的なリターンを追求する投資手法)に対して勝ち続けるファンドがありました。勝ち続けるファンドの存在は、個別株をよく調べれば超過収益を上げられることを実証していると思います。
個人投資家であっても個別株への投資であれば、ファンドに対する信託報酬もいらないですし、長期目線でそれなりに勉強すれば超過収益を上げられる可能性があり、ロマンがあると思っています。
4資産均等ポートフォリオ(GPIFのポートフォリオ)を基礎としつつも、株式投資の部分を、投信から個別株投資に振り向けるのも一手です。しかし、個別株の情報を集めるのには、手間がかかる労働集約的な作業も求められます。誰もが向いている投資手法ではなく、好きな人は是非取り組んでいただきたい。ただし、インデックス投信への投資でも十分でしょう。
——今後の一般投資家を取り巻く環境をどう考えていますか。
宇根:投資は、企業の成長を疑似体験できる社会勉強であり、自分の資金をどこに振り向けるのかを考える、やりがいのある作業でもあります。市場に参加して、勉強することを楽しめる人が増えていけば、国全体が投資上手になるという国家としてのアジェンダにつながり、良い流れになるなと思っています。
※本記事は特定の投資対象を推奨するものではなく、あくまで個人の投資経験を紹介するものです。実際の投資や売買に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。


